
安納紅の魅力まるわかり!安生紅の特徴・栄養・美味しい食べ方まで紹介します
見た目からも伝わってくる、しっとりとした濃厚な質感。そして焼き上がった瞬間にふわりと立ちのぼる、甘く香ばしい香り。そんな五感をくすぐる魅力をもつ「安納芋(あんのういも)」は、いまや全国で多くの人に愛されているさつまいもの代表格です。
そのなかでも、ひときわ甘みが強く、断面に広がるオレンジ色の果肉が印象的な品種が「安納紅(あんのうべに)」です。初めて名前を聞いたという方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこの安納紅、以前はごく限られた地域――種子島などの一部でしか栽培されていなかった、特別なさつまいもなんです。手に入る機会が増えた今だからこそ、その個性やおいしさをもっと深く知っていただけたらと思い、この記事では安納紅の魅力をたっぷりとご紹介していきます。栽培の歴史や育てられている土地のこと、体にうれしい栄養素、そしておいしく味わうためのちょっとしたコツまで、紹介していきますね。
読み終えるころには、きっとあなたの心の中にも「安納紅を食べてみたいな」という気持ちが芽生えているはず。そんな出会いのきっかけになれたらうれしいです。
安納紅とは? 種子島から生まれた甘い宝物
安納紅(あんのうべに)は、鹿児島県の種子島、その中でも「安納(あんのう)」と呼ばれる地域を中心に育てられてきた、特別なさつまいもです。「安納芋(あんのういも)」という名前で広く知られていますが、実はこれはひとつの品種名ではなく、安納紅と安納こがねという2つの品種の総称なのです。
その中でも「安納紅」は、赤紫色の皮が目を引く存在。対して「安納こがね」は、ジャガイモを思わせるような、やわらかいクリーム色の皮を持っています。それぞれに個性がありますが、安納紅は見た目にも味わいにも、とても印象的な品種として知られています。
ころんと丸みを帯びた形や、少し紫がかった葉先など、畑の中でもひときわ目立つ安納紅。その最大の魅力は、火を通したときのとろけるような食感と、心までとろけそうな濃厚な甘さです。なんと、生の状態でも糖度はすでに16度前後。これは一般的なさつまいもよりもずっと高い数値です。
さらに、時間をかけてじっくりと低温で焼き上げると、糖度はなんと40度近くにまで跳ね上がることも。自然の甘さとは思えないほどの濃厚さで、ひとくち食べればまるでスイーツを味わっているような満足感があります。
土とともに歩んだ安納紅の歴史
安納紅のルーツをたどると、その始まりはずっと昔、江戸時代にまでさかのぼります。元禄11年(1698年)、当時の種子島の島主が、琉球、現在の沖縄からさつまいもを持ち帰ったことがきっかけでした。そこから少しずつ島内での栽培が広がり、やがて島の人々にとって身近な作物となっていったのです。
そして現在の「安納紅」と呼ばれる品種は、戦後にスマトラ島のセルダンという土地から持ち帰られた芋をもとに、長い年月をかけて選抜・育成されたものだと伝えられています。その努力が実を結び、平成10年には正式に品種として登録されるまでになりました。さらに注目すべきなのは、その登録後しばらくの間、「育成者権」という権利によって、種子島の限られた地域でしか栽培が認められていなかったという点です。そのため、「安納紅といえばやっぱり種子島」といった声が多く、本場ならではの味わいが長く大切にされてきたのです。
近年では、種子島以外の地域でも栽培されるようになり、少しずつ手に入りやすくなってきましたが、やはり種子島ならではの火山灰質の土壌や、温暖で穏やかな気候が育む安納紅には、特別なおいしさがあると評判です。
収穫までには時間と手間がかかる
安納紅が私たちのもとに届くまでには、実はとても丁寧な手間ひまがかけられています。春先になると、まず育苗からスタート。元気な苗を育てたあと、4月下旬から7月上旬にかけて畑へと植え付けられます。そこからは、太陽の光をたっぷり浴びながら、土の中でじっくりと育っていきます。根を張ってから収穫までには、だいたい120〜140日ほど。夏の終わりから秋にかけて、ようやく収穫の時期を迎えます。
でも、収穫したばかりの安納紅は、まだ本来の甘さを十分に引き出せていません。ここで大切なのが「熟成」というひと手間。収穫後の芋を約1ヶ月かけてゆっくりと寝かせることで、でんぷんが糖に変わり、あのとろけるような濃厚な甘みが生まれてくるのです。
こうして食べごろを迎えるのは、ちょうど寒さが増してくる11月から1月頃にかけて。外は冷たい空気に包まれていても、糖度が高く、ねっとりとした独特の食感の安納紅を頬張れば、心までぽかぽか&甘い余韻に浸ることができるのです。そんな旬とも言える季節ならではの楽しみが詰まっています。
体も喜ぶ!安納紅の栄養
安納紅といえば、その鮮やかなオレンジ色がとても印象的ですよね。この美しい色合いには、実は栄養がたっぷり詰まっているんです。中でも豊富に含まれているのが「βカロテン」。体の中でビタミンAとして働き、目の健康やお肌の調子を整えるのに役立つ、頼もしい栄養素です。
さらに安納紅は、甘みのもととなるショ糖や果糖が多く含まれていて、一般的なさつまいもに比べてでんぷんの量がやや少なめ。これが、あのとろけるようなねっとり食感の秘密なんです。加えて、果糖は冷やすことで甘みがより際立つ性質があるため、焼き芋を冷ましてからいただくと、またひと味ちがった濃厚さを楽しむことができます。
とはいえ、安納紅の魅力をしっかり引き出すためには、少しだけ調理の工夫が必要です。たとえば、電子レンジで一気に加熱してしまうと、水分が飛びやすく、ねっとり感が損なわれてしまうことも。おすすめは、オーブンや炊飯器などを使って、時間をかけてじっくり火を通す方法です。低温でじわじわと焼き上げることで、甘さがしっかり引き出され、とろけるような食感も存分に味わえますよ。
シンプルな調理だからこそ、ちょっとした工夫でぐんとおいしさが変わるのが安納紅の魅力。ぜひ、旬の時期は近所のスーパーでも手軽に買える安納紅ですので、おうちで試してみてくださいね。
安納紅のおいしい楽しみ方
せっかくの安納紅、その魅力をしっかり味わうなら、ちょっとした工夫でさらに美味しくいただけます。いくつか、おすすめの食べ方をご紹介します。
アイスのように楽しむ冷凍焼き芋
焼きたての安納紅を楽しんだあとは、ちょっと変わった楽しみ方もおすすめです。焼き芋を輪切りにしたり、縦半分にカットしたりして、そのまま冷凍庫へ入れておくだけ。あとは食べたいときに、常温で少し置いておけばOK。スプーンがすっと入るくらいのやわらかさになったら食べごろです。
ひんやりと冷たくて、口の中でねっとりととろけていくその食感は、まるで濃厚なスイートポテトアイスのよう。自然な甘さがしっかりと際立つので、砂糖や乳製品を加えなくても大満足の味わいになります。市販のアイスよりもカロリーを抑えられるうえに、食物繊維やビタミンも摂れるので、ダイエット中のちょっとしたごほうびスイーツとしてもぴったり。罪悪感のない「冷やし焼き芋」、ぜひ冷凍庫に常備しておきたいひと品です。
オーブンで作るさつまいもチップス
安納紅を皮ごと薄くスライスして、ほんの少しだけ油をまぶしてからオーブンで焼くだけで、パリッと軽やかな食感のヘルシーチップスが楽しめます。油が気になる方は、ノンオイルでトースターを使ってもOK。シンプルな調理でも、安納紅の自然な甘みがしっかりと感じられるので、ついつい手が伸びてしまう美味しさです。
そのままでもじゅうぶんですが、ちょっとひと工夫して味に変化をつけるのもおすすめ。たとえば、ほんのり香るシナモンをふりかけてみたり、黒ごまを散らして香ばしさをプラスしてみたり。甘さの中にアクセントが加わることで、また違ったおいしさが広がります。おやつとしてはもちろん、小腹がすいたときのおつまみや、子どものおやつにもぴったり。
もちふわ食感のさつまいもドーナツ
茹でた安納紅をやわらかく潰して、小麦粉と卵を加えてひとまとめにしたら、あとはコロコロと丸めて油でカラッと揚げるだけ。とてもシンプルなのに、外はサクッと中はほくほくの、思わず笑顔になるおやつが出来上がります。
さらに、真ん中にチーズを入れてみると、ほどよい塩気とコクがプラスされて、甘じょっぱさがクセになる味わいに。安納紅の優しい甘さとチーズのとろけるコクが合わさって、おやつとしてはもちろん、軽めの軽食にもぴったりな一品になります。お子さんのおやつに出せば、きっと夢中になって食べてくれそうですし、ちょっとした手みやげや差し入れにも喜ばれそうですね。
最後に:一度は味わいたい、安納紅のやさしい甘み
種子島の豊かな自然に抱かれて育った安納紅は、ただ甘いだけでは語りきれない、深みのある味わいとしっとり、ねっとりとしたなめらかな食感が魅力です。ひとくち食べれば、その独特な甘さの奥に、土地の恵みがぎゅっと詰まっていることを感じられるはず。以前より市場には出回っていますが、紅はるか等の同じようなねっとり系さつまいもと比べると出回る数はそれほど多くなく、スーパーなどで見かける機会は限られています。だからこそ、店頭で安納紅を見つけたときは、まさに出会いのチャンス!即買いをおすすめします。もし近くのお店にないときでも、最近ではオンラインショップなどを利用すれば、自宅にいながら手軽にお取り寄せできます。
寒い季節、湯気の立つ焼き芋をほおばる時間は、それだけでちょっとしたご褒美ですよね。そんな特別なひとときを演出してくれる安納紅は、大切な人への贈り物としてもきっと喜ばれる存在です。さつまいも好きな方や最近ではふるさと納税でも沢山、出品されているのでこちらもチェックしてみてくださいね。
心と体をじんわりと温めてくれる安納紅。その奥深い美味しさを、ぜひ一度ゆっくり味わってみてくださいね。ねっとり食感が好きで焼き芋は甘さが肝心!と思っている方にはぴったりですよ。