スーパーではもはや常備野菜といっても過言ではなくなってきている焼き芋。その人気が増すのに比例して、自宅でも一層美味しい焼き方が生み出され続けています。家で焼き芋を作ってみようとしてさつまいもを加熱しても何だか甘味もねっとり感も足りず、イマイチな味に落胆したことのある方も多いのではないでしょうか。やはり焼き芋の美味しさはたくさんの石と焚火、それを許容できる敷地がなければ作り出せないものと感じたことのある方、諦めるのは早すぎます。さつまいもの特性を理解し、一手間加えるだけで、例え都会のど真ん中でも美味しく焼き芋を作ることができます。この記事では実際に著者が話題の焼き芋の作り方と実践レポートを忖度なしでお伝えしていきます。
それでは早速実践レポートに入りましょう。今回お試しする作り方は塩を用いる作り方です。焼き芋って甘く仕上げたいはずなのに塩⁉一見逆効果のように見えるのではないかと思います。しかし、この塩こそが甘さを引き出す要となります。まずは材料から紹介していきます。
焼き芋をいつも通りの時間で作ってみた
<材料・焼き芋1本分>
- さつまいも・・・1本
- 水・・・600ml
- 塩・・・小さじ1
<必要な道具>
- 大きめのボウル
- アルミホイル
材料も道具も必要最低限のものだけで作ることができます!
<作り方>
1.さつまいもはよく洗い、端を1cm程度切り落としておく。
ボウルに塩水を作り、さつまいもを皮付きのまま2時間漬け込む。
早速、甘さの決め手となる塩が登場です。さつまいもを塩水に漬けることで、味の相対効果により甘味が際立つようになるとのこと。半信半疑な思いにかられながら、しょっぱい水の中にさつまいもを入れます。ちなみに、わざわざ道具にも記載したように大き目のボウルでないと全体が漬かりません。複数本作るとなったら、より大きなボウルが必要になるので、探しておいてくださいね。ボウルではなくてもタッパーや他の容器でも、とにかく漬かることができればOKです。
2.水気を軽く拭き取り、アルミホイルで包む。
予熱なし、100℃のオーブンで120分加熱する。
2時間が経過。塩水に漬けたら何かしら変化があるかと思いきや、特に何も変化はありませんでした。当然と言えば当然です。一応押してみましたが、やはり硬いまま。変化のなさに本当に美味しさに近づいたのだろうかと不安が増しますが、とにかく試してみることこそが料理研究家の使命です。
アルミホイルは一説にはきちんと包むよりも少し余裕を持たせて包んだ方が良いということでしたので、あえて緩めに包みました。そしていよいよ加熱です。オーブンはあえて予熱なしでスタートします。予熱なしとは面倒くさいだけでは?と思いましたが、これにはきちんと理由がありまして、予熱なしで加熱を開始することによって、徐々に温度が上がっていくため、さつまいもの甘さがより引き出されるという理論だということ。これには納得です。さつまいもはゆっくり加熱することで甘さが増すのです。加熱時間こそ長いですが、その間は家事でも何でもできるので、とっても楽です。
3.待つこと2時間。いよいよ待望の試食タイムです。オーブンの周りはさつまいもの甘い香りで既に充満していました。間違いなくさつまいもの甘味が引き出された証拠でしょう。まずは触るところから。焼き芋とふかし芋等の他の加熱法のものとの違いは、このファーストタッチで分かります。あの何とも言えないぐにゃっとした柔らかさは焼き芋ならではの感触。そして、その感触こそが奥深い甘さの証です。立場上は粗熱が冷めてから触るようにと指導している著者ですが、思わず焼きたての状態で表面を押してみました。おっと!これは焼き芋のねっとり感が感じられる感触です!この時点で2時間待って良かったと思わされます。一応伝えておきますが、皆様には少し冷めてから、もしくは軍手やミトンをはめての作業を推奨します。そして肝心のお味はといいますと、確かにとてもホクホクしていて甘さがしっかりと感じられます。
もちろん、塩気は全くなく、甘さがよりはっきりとしているように感じられます。しかし、物凄く変わったのかというと、正直そこまでの大差はありませんでした。ただ美味しいことには間違いありません!理想は塩水に半日から一晩漬け込むそうなので、次は気合を入れて長めの塩漬けに挑みます!
焼き芋は、時間をかければかけるほど美味しくなるのか?更に時間をかけてじっくりと作ってみた!
焼き芋といえば、蒸したり、揚げたり、茹でたりしたときには出せないねっとりとした強い甘味が特長ですが、その真逆とも言える塩を使うことで一層の甘さが引き出せると言われています。料理研究家が自ら実践してレポートします!今回はなんと半日以上をかけての実践です。焼き芋の新たなる美味しさを求めて挑みます。
焼き芋を時間をかけてじっくりと作ってみた
<材料・焼き芋1本分>
- さつまいも・・・1本
- 水・・・600ml
- 塩・・・小さじ1
スーパーでさつまいもがたくさん並んでいると、ついなるべく大きいものを選んでしまいませんか?確かにたくさん食べたい気持ちを考えると大きさも重要ですが、美味しい焼き芋を作るなら、大きさよりも重視してほしい点があります。それは、皮に黒い模様のようなものが付いているかどうかです。ややべたつきがあり、見方によっては汚れのように見えるため、避ける方も多いのですが、実はこれこそが蜜がたっぷり詰まっている証なのです。見かけたときは迷わずカゴに入れるようにしましょう。
<必要な道具>
- 大きめのボウル
- アルミホイル
<作り方>
1.ボウルに塩水をつくる。さつまいもは皮付きのままよく洗い、端を落とす。塩水に半日漬ける。
今回は半日がかりということで、さつまいもも長い間塩水とお付き合いです。早く美味しい焼き芋を食べたいときには辛いので、前の晩から漬け込んでおくことをオススメします。
2.水気を拭き取り、アルミホイルで包む。余熱なし100℃のオーブンで120分焼く。
ようやくさつまいもが塩水から出てきました。塩辛い環境に長時間さらされていたのですから、「お疲れさま」と思わず声をかけたくなります。浸水時間は2時間のときに比べて約6倍の長さになりましたが、特に変わった様子は見られません。触っても硬いままですし、色や大きさの変化もありません。またもや本当に美味しさは増すのだろうかと不安な気持ちが過ぎますが、2時間でも塩水につければ甘さがはっきりすることを実感したので、6倍漬け込んだら何かしら良い変化があるのではと思い、アルミホイルを手に取ります。美味しさの可能性があるならば、キッチンに立つことが料理研究家の使命です。さつまいもをアルミホイルで包み、鉄板に乗せて、予熱なしの100℃のオーブンに120分入れます。やっと塩水から出たと思ったら、今度は100℃の世界で2時間過ごすことになったさつまいも。美味しい焼き芋になるために頑張っています。
3.ようやく2時間が経過しました。塩水に漬け込んでから14時間以上が経過し、随分と壮大なプロジェクトとなりました。今回もオーブンからは焼き芋の甘い香りが漂っています。待ちきれない思いでオーブンのドアを開け、恒例の触感チェック!食感だけでなく、触感も焼き芋の重要な指標です。
完成に半日以上もかかったので、どうなったものかとドキドキしながら出来上がった焼き芋を軽く押してみると、2時間漬けたときと触感はあまり変化は感じられませんでした。少し残念な気持ちになりましたが、気を取り直して試食へ!運命のお味ですが、これもまた2時間漬けた場合と大差は感じられませんでした。強いて言うなら、ややしっとりとした感じがします。これだけ待ったのに大きな差が生まれなかったことに絶望しかけましたが、逆に言えば、浸水2時間でも同じ甘さで作れるということだと思うと、お得な気がします。ちなみに、焼き芋のもう一つの指標である「ねっとり感」については、加熱法というよりも品種の違いが大きく左右するようです。数回試した中では、太めのさつまいもだと120分ではまだ硬いものもあったので、直径4cmを越える太さのものの場合は150℃で焼くのがオススメです。これだと太めのものでも120分でしっかり火が通っていました。最後に一つ。焼き芋は長時間焼くのだから、新鮮じゃなくても大差ないだろうという油断は禁物です!値下げ品になっているさつまいもを見ると、つい選びたくなりますが、古いさつまいもは水分量が少なく、長時間加熱しているとパサパサになる傾向がみられます。シンプルな調理法だからこそ素材の良さが生かされるのが焼き芋です。美味しい焼き芋を目指すなら、新鮮なさつまいも、良いさつまいもを選ぶようにしてくださいね。
結論
焼き芋の美味しさを決めるのは品種とさつまいもの鮮度、大きさ。焼成時間や塩水に漬けこむ時間を長くしても大きくは変わらなかった。値引き品等になっている安価なさつまいもを選んでしまうと(選ぶ気持ちは私もよく分かります)さつまいもの水分量により焼き芋の味が大きく変わってしまうので要注意です。