五島・福江港の春の風物詩とは?毎年3月は進学や就職、そして転勤、転職等で島を離れる人が集中する時期です。五島の風物詩とも言える紙テープやエール、プラカード。そして号泣を教えます!

日本は今、侍ジャパンのおかげで、コロナで欝々としていた気分を一掃されたような、すがすがしい気持ちになっています。朝晩冷え込むものの、気が付けばもう春、桜が日を追うごとに満開になってきています。

アグリ・コーポレーションでは2月に種芋を伏せ込み、少ししか芽がでておらず心配してましたが、今は青々と茂って、予定どおり4月から植え付けを開始できます。これも、社員が休みの日も交代でビニールハウスの温度をチェックし、育苗の管理を徹底しているおかげです。

五島の春の風物詩

子どもたちも終業式が終わり、春休みに突入し、あの季節がきてしまいました。そう、五島のこの時期といえば、見送りシーズンの真っ只中です。五島をはじめ、多くの離島では、大学や就職、職場の異動で、島を離れる人がたくさんいます。特に学校の先生の見送りは、多くの子どもたち、保護者、職員が一気に港に押し寄せます。

港前の有料駐車場は満車になるので路上駐車する車しかなく、この時期だけ警備員を配置しています。

島を出る人へ、思い思いのプレゼントや花束を持ち、最後のお別れを云いに、ターミナル内に人がごった返します。主役がフェリーに乗ると、今度はフェリーの横の広場に皆移動します。甲板にすでに結ばれた紙テープの束の前に、主役が再登場すると、先生や子どもたちでエールを送ります。

思い思いのメッセージ入りのプラカードを作ったり、学校名の旗や、同じクラブの子が転校するところは部の横断幕が大活躍します。また、見送りが何組もある日はボランティアで、五島高校吹奏楽部が生演奏。(なぜかいつも「風になりたい」という選曲が気になるが…)
長崎本島から転任してくる先生は短くて3年、長くて5年、島に勤務します。

最初は、島の不便さなどを実感しながらも、だんだんと島のペースになじんできた頃にまた本島に戻ります。単身で来る人も多いですが、家族で島に来ている場合は、家族それぞれに紙テープとエールが送られ、いつも大号泣です。担任の先生だけでなく、五島の情報網を駆使して、元担任の先生の見送りも欠かさない、まさに春の風物詩で、島では当たり前のことですが、都会から観光でフェリーに乗っている人にとってはとてもめずらしい光景らしく、もらい泣きする人や、紙テープのコントラストと島の子たちの純粋なエールにカメラを向ける人もいます。

変わらない風景と変わっていくもの

ターミナルの放送で「蛍の光」が流れ出すと出発の合図の汽笛と共に出港します。それを合図に、子どもたちは桟橋の端まで200メートルほどを全力疾走し、船を追いかけるのがいつもの流れになっています。いつまでも手を振り見送る優しい子どもたちにいつも胸が熱くなります。今どきの島の子たちも、まだまだ捨てたもんじゃないなと思う今日この頃です。その間に大人たちは紙テープの回収。以前は紙テープの芯が見えるまで紙テープを握りしめ、綺麗な放物線を描いていました。

見えなくなるころにフェリーの会社の九州商船さんが甲板から引き上げて回収していましたが、今は、出発と同時に目の前でテープをほどかれ、陸に落とされます。ひと昔前までは、野球部が、紙テープを空高く投げ、甲板に届いたら、また甲板から投げ返すとかやっていましたが(笑)海の環境を考えてのことでそれも禁止、海に飛び込むのも禁止(笑)少し寂しい気もします。

私も大学進学で島を出るときに同級生や後輩に見送ってもらったのをいつも思い出します。私の故郷奈留島では、「蛍の光」ではなく、ユーミンの「瞳を閉じて」が今でも流れています。島を離れる人に向けた歌で、ぴったりな歌詞なのでぜひ聴いてみてください。

先日も小学生の子どものお友達家族が島を出ていき、とても寂しい気持ちでいっぱいになりましたが、また五島に遊びに来ることを約束してくれました。中学生の娘は、午後から、学校の先生の引越しの手伝いです。部ごとに先生の引っ越しの手伝いを割り当てられ、荷物を運びます。そして、新しい先生を迎えるときも手伝います。島の中高生あるあるです。初めて島にくる先生は、恐縮、感銘すると同時に新学期を迎える前に子供たちに質問の嵐の洗礼を受けるのです(笑)

五島市の人口推移と背景

五島市の人口は、他の二次離島も含め、34,956人(2023年1月31日現在)で、1980年代の約半分になっています。人口減少の一途をたどる一因は、第一次産業の衰退、大学進学率の上昇、島に若者が職につけないため、大学や専門学校卒業後そのままそこにとどまり、結婚してしまうから、などです。しかし、最近は移住者が増え、春に転出していく人に対して若干転入者が増えている動きもあります。島にもう一度帰ってきたいと思う人も増えてきてはいますが、高校卒業してからすぐ働ける場所があまりないので、そこが企業の踏ん張りどころで、私たち大人、親世代の課題でもあります。

アグリ・コーポレーションでは今年4月に鹿児島の大学卒業生1人、地元の高校から1人新入社員を迎えます。毎年、若い社員を迎えることができるような、五島にずっといたいと思えるような、会社の環境づくりができるように頑張っていきたいと思っています。