さつまいもとひと口にいっても、その世界はとても奥深く、思わずわくわくしてしまうほど幅広い品種が存在します。農林水産省の情報では、全国で育てられている品種はおよそ 60種類。これほど多いと、同じさつまいもでも味わいや食感に違いが生まれ、選ぶ楽しさがぐっと広がります。そこで今回は、普段よく耳にする代表的なさつまいもを「ほくほく系」「しっとり系」「ねっとり系」という3つのタイプに分けて、ゆっくりと特徴をたどっていきます。それぞれに魅力があり、焼いたり蒸したりするだけで個性がふわっと際立つのが面白いところです。
さらに、外見がぱっと目を引くカラフルな品種や、少し珍しい風味を持つものもまとめてご紹介します。ひとつひとつに小さな物語があり、眺めているだけでも楽しくなってきます。気になるものがあれば、ぜひ一度手に取ってみてください。好みにぴったりの一本に出会えると、日々の食卓が今よりも少し明るく感じられるかもしれません。
【ほくほく】が特徴のさつまいも品種
昔ながらの焼き芋らしい味わいを思い浮かべたとき、まず心に浮かぶのが「ほくほく系」と呼ばれるさつまいもです。火を入れると中がふんわりとほどけるように仕上がり、水分が控えめな分だけ粉質の舌ざわりが際立ちます。口に入れた瞬間に広がる ほくっとした軽やかさ は、どこか懐かしさを感じさせ、今もなお根強い人気があります。
その中でもよく知られているのが、「東の紅あずま」と「西の高系14号」。地域によって愛され方が異なるとはいえ、どちらも昔から親しまれてきた定番の存在です。焼き芋にすると素朴な甘みがふっくらと膨らみ、天ぷらや大学芋にしても形が崩れにくく、料理の幅が広がるのも魅力のひとつ。ほくほくした食感が好きな方には、きっと満足感のある味わいになってくれるはずです。
紅あずま

「東の紅あずま」と呼ばれるように、茨城県や千葉県を中心とした東日本で広く育てられている品種です。店頭でもよく見かける存在で、青果用としての国内シェアは トップクラス。日常の食卓にもっともなじみのあるさつまいもと言っても過言ではありません。繊維が控えめで、火を通すとほくっとしながらも舌ざわりがやわらかく、すっとほどけるような食感が楽しめます。甘みがしっかり感じられることから、昔ながらの焼き芋の素朴な甘さに魅力を感じる方にはぴったりの品種です。ふだんのおやつに取り入れても自然とほっとした気持ちになれそうです。
高系14号

1945年に品種登録された高系14号は、長い年月にわたり親しまれてきた歴史あるさつまいもです。西日本を中心に広く栽培され、その存在感は今も変わらず大きなものがあります。焼き上げると ほくほくとした軽やかさ が広がりつつ、ほんのりとしたねっとり感も感じられ、両方の魅力をほどよく味わえるのが特徴です。
繊維が少ないため口当たりがやわらかく、甘みも豊かに感じられます。この品種をもとに改良されたさつまいもも多く、代表的なものとして「鳴門金時」「五郎島金時」「宮崎紅」「ベニサツマ」などが知られています。どれもそれぞれに個性があり、高系14号の流れを受け継ぎながら、地域の気候や土壌が加わってまた違った魅力が生まれています。
【しっとり】が特徴のさつまいも品種
「しっとり系」と呼ばれるさつまいもは、「ほくほく系」と「ねっとり系」のちょうど真ん中にあるような存在で、どちらの良さもほどよく味わえるのが特徴です。加熱すると水分が適度に残り、口に運ぶと なめらかでやさしい舌触り が広がります。重すぎず軽すぎず、しっとり感と甘みがふわっと寄り添い、日常のどんなシーンにも合わせやすいところが魅力です。
焼き芋にしてもほくほく感がありつつ、内側はしっとり落ち着いた食感が続きます。スイートポテトや洋菓子づくりにも使いやすく、料理の幅が広がるのも嬉しいポイント。はじめて品種を選ぶ方にも手に取りやすいタイプです。
シルクスイート

2010年に登場した比較的新しい品種で、茨城県や福島県、千葉県などを中心に育てられています。まだ歴史は浅いながらも、その魅力は深く、「こんな食感のさつまいもがあるなんて」と驚かれることも多いようです。火を通すと、まるで 絹(シルク)のようになめらかでふんわり とした口当たりになり、一度食べると記憶に残るほどのやさしい食感が広がります。
甘さは濃厚ですが重たさはなく、上品で澄んだ味わいが楽しめます。焼き芋にすればしっとりと甘みが際立ち、スイートポテトやケーキなどのスイーツにもよく合うため、料理好きの方からも注目されています。栽培面積がまだ多くないことから、市場では見かける機会が限られ、「幻のさつまいも」と呼ばれることもあるほどです。
【ねっとり】が特徴のさつまいも品種
2003年ごろに訪れた安納芋ブームをきっかけに、一気に存在感を高めたのが「ねっとり系」と呼ばれるさつまいもです。火を入れると水分がたっぷり残り、舌にとろりと絡むような質感が広がります。いわゆる焼き芋のイメージを超えて、まるで ペーストのように濃密でやわらかい食感 を楽しめるのが、このタイプの大きな魅力です。
スプーンで軽くすくえるほど柔らかく仕上がる品種も多く、甘さもしっかり感じられるため、まるでスイーツを味わっているような満足感があります。おやつとしてそのまま食べても心がほっと和らぎ、スイートポテトやデザートづくりにも向いているため、幅広い楽しみ方ができるタイプです。
安納芋

種子島を原産とする安納芋は、数あるさつまいもの中でも印象に残りやすい存在です。火を通すとねっとり濃厚な食感が際立ち、ひと口食べるだけでふわっと広がる甘さに驚かれる方も多いようです。特に、他の品種と比べてショ糖を多く含むため、加熱するほど甘みが引き立ち、なかには 糖度40度を超えるほどの濃厚な甘さ に達するものもあります。
この特徴から「蜜芋」と呼ばれる高糖度タイプの元祖ともいえる存在で、スイーツづくりに使われることもしばしば。焼き芋として楽しめばとろりとした甘さが際立ち、ペーストにすればデザートの素材としても豊かに活躍します。自然の恵みがぎゅっと詰まったような味わいで、幅広く親しまれている理由が納得できる品種です。
紅はるか

「他のさつまいもよりはるかに優れている」という意味を込めて名づけられた紅はるかは、その名のとおり存在感のある品種です。じっくりと時間をかけて加熱すると甘みがぐっと引き出され、場合によっては安納芋を上回るほどの糖度に達することもあります。特に蒸しいもにすると しっとりと深い甘さ が素直に味わえるため、紅はるか本来の魅力を感じたい方にぴったりです。舌触りがなめらかなため、ペーストにしたときの仕上がりが美しく、スイートポテトやプリンなどのスイーツにもよく合います。素材の甘みだけで完成度の高い味わいになるので、お菓子づくりが一段と楽しくなる品種です。
また、大分県の「甘太くん」、宮崎県の「葵はるか」、茨城県の「紅天使」といった名前で販売されているものは、いずれも紅はるかをブランド管理したラインで、それぞれの地域ならではの育て方によって、また違った魅力が引き出されています。
【カラフル】が特徴のさつまいも品種
さつまいもの断面といえば、ほんのりと淡い黄色を思い浮かべる方が多いかもしれません。けれども、品種によっては切った瞬間にぱっと鮮やかな色が広がり、思わず手を止めて眺めたくなるようなものもあります。見た目に個性があるだけで、お料理の印象が ぐっと華やかになる のが嬉しいところです。
ここからは、そんなカラフルな彩りを楽しめる少し珍しい品種たちをご紹介します。それぞれに特徴があり、味わいだけでなく見た目の美しさでも楽しませてくれます。普段とは違った一本に出会うきっかけになるかもしれません。
紫色のさつまいも

紫芋は、アントシアニンという色素を多く含むため、切ったときに広がる鮮やかな紫色が大きな魅力です。この独特の色合いから、スイーツやお菓子の生地に加えるだけで見た目が一気に華やぎ、料理の仕上がりが ぐっと印象的 になります。
味わいは、一般的なさつまいもと比べると甘みが控えめで、すっきりとした軽やかさが特徴です。上品であっさりとした風味は、甘さを抑えたいお菓子づくりにも向いており、色味だけでなく使い勝手の良さからも多くの人に親しまれています。
パープルスイートロード

黄色いさつまいもほどの強い甘さはありませんが、紫芋のなかでは甘みがしっかり感じられる品種です。控えめでありながらも 上品に広がるやわらかな甘さ は、甘すぎる味が苦手な方にもぴったりで、ほっとするような後味が楽しめます。
蒸しても焼いても風味がきれいに際立ちますが、鮮やかな紫色を活かしたスイートポテトやタルトなどのスイーツに仕立てると、一段と魅力が増します。見た目の華やかさも加わるため、食卓やおもてなしの場を明るくしてくれる存在です。
オレンジ色のさつまいも

日本ではあまり見かけない色味ですが、中南米やアメリカでは、さつまいもといえばオレンジ色の果肉が一般的です。切った瞬間に広がる鮮やかな色はとても印象的で、その理由はニンジンやカボチャと同じ β-カロテンを豊富に含んでいる ためです。地域によって“さつまいもの当たり前の姿”が異なるのは、なんだか興味深いですね。
栄養価が高いことも特徴で、甘みのある風味を活かしてジュースやスムージーに使われることも多く、気軽に楽しめる健康食材として親しまれています。料理だけでなく飲料にも展開されるほど幅広く愛されているのが、このオレンジ系さつまいもの魅力です。
あやこまち

紫色の皮に対して中身は鮮やかなオレンジ色という印象的なコントラストを持つ「あやこまち」。見た目の華やかさだけでなく、繊維が少なく扱いやすい点も魅力です。火を通すとややねっとりとした質感になり、口に含むと しっかりとした甘みがふわっと広がる 一方で、後味はすっと軽やかで食べ疲れしにくいのが特徴です。
冷めても甘みが落ちにくいため、料理の幅が広がりやすく、サラダやポタージュにすると色が映えて食卓がぱっと明るくなります。スイートポテトや焼き菓子に使っても存在感が引き立ち、見た目と味わいの両方で楽しめる品種です。
色々なさつまいも品種を試して、好みを見つけよう
さつまいもは、ひとつの名前で呼ばれていても、品種によって味わいも食感も大きく変わる、とても奥深い食材です。ほくほく系は昔ながらの素朴な甘さ、しっとり系はなめらかで上品な口当たり、ねっとり系はスイーツのような濃密さが魅力。それぞれのタイプに、長く親しまれてきた定番品種から、近年登場した新しい品種まで、豊かな個性が詰まっています。
さらに、紫やオレンジなどカラフルな品種も加わり、見た目でも楽しめるバリエーションが増えています。料理に使えば色味がぐっと映え、お菓子づくりにも新しい発見があるはずです。
日常の食卓に、ぜひ気になる一本を取り入れてみてください。好みに合うさつまいもが見つかると、毎日のごはんやおやつの時間がいっそう楽しみになるかもしれません。








