安納芋（あんのういも）という品種名は、おいも通な方はもちろん、おいも通でなくても必ず聞いたことがあるのではないでしょうか。焼き芋専門店、こだわりのスイーツ店、おいものお菓子など、様々なところで見かけることがあると思います。では、安納芋は他のさつまいもとは別物なのでしょうか。そうだとしたらその理由とは？今回の記事では安納芋の特徴を深掘りしていきます。安納芋が好きな方、ちょっと気になる！という方はぜひ読んでみてください。
安納芋とは？
安納芋は、1947年頃から鹿児島県の種子島北部の安納地区で栽培したのが始まりです。品種改良により、1998年に「安納紅」と「安納こがね」が登録され、徐々に安納地区以外でも栽培がされるようになりました。2013年以降では、種子島以外でも自由に栽培や販売がされるようになり、鹿児島県内、高知県、秋田県、愛知県など各地で栽培されています。
安納芋とさつまいもは別物
植物学上では、安納芋はさつまいもの仲間です。ですが、さまざまな理由から、一般的なさつまいもと安納芋は別物とされることが多いようです。その理由を見ていきましょう。
安納芋が他のさつまいもと別物と言われる理由
安納芋が他のさつまいもと違う理由１「蜜いも」と呼ばれるほど甘い
安納芋の特徴は、なんと言ってもその甘さ。糖度は生の状態で約20度、焼くと約40度にもなり、これはフルーツジャム並みの甘さです。焼いた時に、まるで蜜が入っているかのような格別な甘さから「蜜いも」と呼ばれるほどです。
安納芋が他のさつまいもと違う理由2 まるでスイーツ！クリーミーな食感
加熱するとねっとりとした食感になることも、安納芋が持つ特徴です。一般的なさつまいもよりも水分量が多いこと、なめこやオクラなどと同じ、ムコ多糖類という成分が含まれているためです。クリームのように滑らかな食感は、一般的なさつまいもが持つほくほくとした食感とは別物です。安納芋の焼き芋は、スプーンですくって食べることができるので、まるでスイーツを食しているようです。
安納芋が他のさつまいもと違う理由３ 値段が高く高級いもと言われる
安納芋は一般的なさつまいもと比べると、価格が高く、高級いもと言われています。価格が高い主な理由は二つあります。一つは、主要な産地である種子島からの輸送コストが含まれていることです。まずは九州や本州へ、船で輸送し、そこからトラック等で販売エリアへ輸送されます。積み下ろし、運搬による人件費や燃料費がかさみ、その分が価格に乗ってしまいます。
二つ目は、安納芋の皮は普通のさつまいもと比べると皮が薄いため、手荒に扱うと皮がれてしまいます。そのため丁重に扱う必要があり、運搬などのコストがかさみ価格が上がる傾向があります。以上のことから、安納芋は価格が高い傾向になり、その他のさつまいもとは別物、とされることが多いようです。
安納芋が他のさつまいもと違う理由４ オレンジ色の果肉
焼き芋にしたときの赤味の強いオレンジ色の果肉も、一般的なさつまいもとの大きな違いです。これはβ-カロテンという赤橙色の色素成分を多く含んでいるためです。β-カロテンは、にんじんやかぼちゃなどの緑黄色野菜に含まれる栄養素で、体内ではビタミンAに変換されます。抗酸化作用をもち、生活習慣病の予防やアンチエイジングに効果的とされる栄養素です。果肉の色が違うことで、一般的なさつまいもと別物扱いされることがあるようです。
安納芋が他のさつまいもと違う理由５コロンとした丸い形
一般的なさつまいもは細長い形ですが、安納芋は違います。ふっくらと丸みのある形をしています。通常のさつまいもでは、細長い形のものの方が丸いものより甘みが強い傾向とされますが、安納芋ではその逆で、丸みのある形の方が甘味が強いとも言われているようです。
安納芋が他のさつまいもと違う理由６ルーツが全く違う
第二次世界大戦後のスマトラ島北部のセルダンという地域から、帰還兵が1個の安納芋を持ち帰り、九州農業試験場種子島試験地（現在の九州沖縄農業研究センター）に持ち込まれ、苗が作られました。その芋はおいしいさつまいもとして安納地区で広がりました。これが安納芋のルーツです。普通のさつまいもは、1600年頃に中国から琉球（現在の沖縄県）、そして薩摩（今の鹿児島県）に伝わったのが始まりとされています。安納芋と一般的なさつまいもは、日本に伝わった年代も、伝わってきた国も全く違うのです。
安納芋が他のさつまいもと違う理由７栄養面での違い
一般的なさつまいもと比べると、糖度が高い、β-カロテン含有量が多いのが特徴です。特に、焼き芋にすると速やかに吸収されることから、効率よく糖質を摂取したい時や、エネルギー不足の時に良いですね。アスリートの試合前の間食や、低栄養が心配される高齢者の方のための食事などで、重宝されています。理由４でお伝えしたとおり、β-カロテンも健康面でのメリットが多い栄養素です。美容には気をつけたいけれど、無性に甘いものが食べたい。そんな女性にとって、安納芋は少量でも満足できるため、とてもおすすめ。焼き芋はまるでスイーツを食べたような満足感です。これも安納芋が他のさつまいものと別物とされる理由ですね。
安納芋と他のさつまいもが違う点のまとめ
今回は、安納芋が他のさつまいもと別物とされる理由について紹介しましたが、いかがでしたか。まとめると、甘さ（糖度）、食感、形、食感、ルーツ、栄養価で、それぞれ安納芋ならではの特徴がありました。特に甘さは、安納芋を安納芋たらしめる大きな特徴です。そんな安納芋は、安納紅、安納こがね、フルーツこがねなど、いくつか種類があります。色味や食感も微妙に異なるため、食べ比べをしてその違いを楽しむのも良いですね。
