周りは家だらけの東京から、憧れの五島列島へ

私は生まれも育ちも東京です。実家の周りを見渡せば、あるのは家やビルだらけ。歩いたって、土の匂いがする畑なんてどこにも見当たりません。
そんな都会のど真ん中で育った私が、なぜ遠く離れた長崎県の離島「五島列島」を知り、移住を決意したのか? きっかけは、中学生の時に出会った『ばらかもん』という漫画でした。
主人公の若き書道家が、書展で偉いお爺さんを殴ってしまい、頭を冷やすために五島列島の福江島へ送り込まれるというストーリー。そこで暮らす個性豊かで温かい島民たちとの交流を通じて、書道家としても人としても成長していく物語です。 作中に描かれる透き通るような海、青い空、そして大自然の美しい景色に、中学生だった私は心を完全に奪われました。

「いつか絶対に、ここに行ってみたい」 一から五島列島について調べ、初めて旅行で訪れた時、そこでの出会いや実際に目で見た景色によって「自分の生きる場所はここしかない!」と直感し、本気で移住を決意したのです。
移住を「失敗」で終わらせないための逆算と準備
ネットで「五島列島 移住」と検索すると、予測変換に「五島列島 移住 失敗」「後悔」といったネガティブなキーワードが出てくることがあります。 確かに、勢いだけで島に来てしまい、仕事が見つからなかったり、生活環境に馴染めなかったりして、数年で都会へ帰ってしまう人がいるのも事実です。

私は中学生で移住を決意しましたが、学生の身分ですぐに飛び出すことはできませんでした。「島での生活に失敗しないためには、五島に必要とされる仕事、五島の風土に合った仕事に就くしかない」と考え、高校は迷わず都立の農業高校を選びました。

そして就職活動の時期。学校から紹介してもらったのが、五島列島で有機さつまいも(安納芋など)を栽培・加工している農業法人「アグリ・コーポレーション」でした。 見学に行き、直接お話を聞いて、「ここで働きたい!」と強く志願。高校を卒業し、今年の4月から正社員として、憧れの五島列島での生活をスタートさせました。

理想と現実のギャップ!就職して味わった「農業の洗礼」
「自然に囲まれたスローライフ」
移住を夢見る人の多くは、そんなのんびりとした情景を思い浮かべるでしょう。しかし、私の五島生活は、そんな甘いものではありませんでした。
4月:農業高校を出たのに…何もできない自分へのショック

入社した4月。全圃場(畑)の場所を記憶したり、さつまいもの苗を植え付ける「定植」の準備をしたりと、やることは山積みでした。 私は農業高校で3年間学んできたという自負がありましたが、いざ現場に出ると、学校で学んだ知識だけでは全く通用しませんでした。分からないことだらけで、先輩たちから怒られながら必死に食らいつく毎日。 「農業高校を卒業したのに、自分はこんなにもできないのか」と、最初はかなりショックを受け、打ちのめされました。
もしここで、「思っていたスローライフと違う」と逃げ出していたら、私の移住は「失敗」に終わっていたでしょう。しかし、「できないのは当たり前、現場でゼロから吸収しよう」と考え方を変えたことでスッと気持ちが楽になり、少しずつ仕事の全体像が掴めるようになってきました。
5月〜6月:定植の過酷さと、リーダーとしての重圧
5月に入ると、いよいよ本格的な定植作業が始まりました。 広大な畑での水やり(潅水)、苗の運搬、定植班での植え付け、苗切りなど、あらゆる業務を経験させてもらいました。驚いたのは、先輩方の作業ペースの速さと的確さです。「プロの農家」の凄みを肌で感じました。
6月には定植のピークが過ぎて人が少なくなり、なんと私が定植班を動かす(リーダー的ポジション)ことになりました。 ただ自分が作業するだけでなく、周りをよく見て、熱中症で倒れそうな人や疲れている人がいたら的確に休憩の指示を出し、一つの畑が終わったら全体の班長へ連絡する。上に立って人を動かすことの難しさと責任の重さを痛感した1ヶ月でした。 でも、この経験のおかげで、農業の技術だけでなく、人としても大きく成長できた気がしています。
東京とは別次元!「夏の暑さ」という移住の壁

「五島列島 移住 失敗」の原因として、仕事の次に多く挙げられるのが「気候・自然環境の厳しさ」です。
7月〜8月:感じたことのない種類の暑さと草取り地獄
7月の第2週目まで定植が続き、その後は炎天下でのスプリンクラー設置や、ひたすら草取り(除草作業)の日々が続きました。 有機栽培を行っているアグリ・コーポレーションでは、除草剤を使わないため、広大な圃場の草取りは人力です。何箇所もある畑をひたすら回り続け、この草取りのおかげで全圃場の位置を完璧に覚えることができました。
そして何より驚いたのが、五島の夏の暑さです。 東京の「アスファルトの照り返しによるムワッとした暑さ」とは全く種類が違います。五島の夏は、強烈な日差しが肌にジリジリと突き刺さるような、「自然の脅威」を感じる暑さなのです。 この過酷な自然環境の中で一日中農作業をする。これは、生半可な覚悟の「田舎暮らしへの憧れ」だけでは、絶対に乗り越えられない壁だと実感しました。
9月〜:新たな試練、フォークリフトと加工所の仕事

夏を越え、9月に入ると、今度は加工所での出荷業務を担当することになりました。 午前中で出荷作業を終わらせ、その後はまた別の新しい業務を覚える日々。今まで畑の土にまみれて覚えてきた仕事とは全く勝手が違います。 特に苦戦したのが、車に似た重機「フォークリフト」の運転です。最初は全く思い通りに動かせず悔しい思いをしましたが、このコラムを書いている秋頃には、ようやくスムーズに乗れるようになってきました。
就職して、五島に移住して半年。 忙しい時は目の前の作業に集中しすぎて、気づいたら次の週、ひどい時は次の月になっていたこともありました。「あっという間の半年」だった気もするし、これだけ濃密な経験をしたことで「もう1年以上も五島で働いている」ような感覚になることもあります。
それでも長崎県五島列島は最高だった!圧倒的な自然の魅力

ここまで、農業の厳しさや夏の過酷さなど、あえて「移住の厳しいリアル(失敗しやすいポイント)」を書いてきました。 しかし、それを補って余りある、いや、それ以上の感動を与えてくれるのが、五島列島という場所です。
私はもともとゆっくりとした時間が好きで、田舎でのんびり暮らしてみたいという想いがありました。その点において、五島列島は私にぴったりの場所でした。
四季の移ろいを「五感」で味わう

移住してきたばかりの春。 島中のあちこちに桜が咲き誇り、どこにいてもウグイスの美しい鳴き声が聴こえてきました。東京ではカラスの鳴き声しか聞こえなかった私にとって、この「春の訪れを音で感じる」という体験は、心をすっかり満たしてくれました。
春から夏にかけて、徐々に気温が上がっていく感覚。最初はエアコンがなくても窓を開けるだけで心地よかった海風が、6月の中旬頃から少しずつ熱を帯びてくる。季節のグラデーションを肌で感じることができます。 車での移動中、窓から見える田んぼの稲が日に日に背を伸ばしていく姿に、「ああ、これが日本の田舎の夏なんだな」と深く感動しました。
懐中電灯がいらない「満月の夜」と「満天の星空」

夏が過ぎ、秋へと季節が変わる今。 朝晩は冷え込むようになってきました。夏の早朝出勤は暑いくらいでしたが、今は「寒くなったな」と身を引き締めながら家を出ます。日の落ちるスピードも一段と早くなりました。
私は星を見るのが大好きです。 五島では、少し車を走らせて街灯のない場所へ行けば、息を呑むような満天の星空が広がっています。季節が変わるごとに、夜空に浮かぶ星座もはっきりと移り変わっていくのが分かります。
そして一番驚いたのは、満月の夜の明るさです。 外灯がなくても、月の光だけで道がはっきりと見え、懐中電灯なしで歩けるのです。「自然の光って、こんなにも明るくて力強いのか」と、都会では絶対に気づけなかった自然の凄さを思い知らされました。
まとめ:五島列島移住で「失敗」しないために必要なこと

「五島列島への移住は失敗するか?」 その答えは、「あなたが何を求めて移住するか」によって大きく変わると思います。
もし、「ただ楽をして、のんびりスローライフを送りたい」という現実逃避の気持ちだけで移住してきたら、厳しい自然環境や、島ならではの密な人間関係、そして一次産業(農業や漁業)の肉体的な過酷さに耐えられず、失敗や後悔を感じてしまうかもしれません。
しかし、「自然の厳しさも受け入れ、ここで生きていく覚悟」を持ち、「田舎の四季を全身で感じたい」と心から思える人にとっては、長崎県五島列島は、間違いなく「最高の場所」になります。
東京から単身で飛び込んできた18歳の私は、怒られ、戸惑い、夏の暑さに打ちのめされそうになりながらも、今、この島での生活を心から愛しています。 これから移住を考えている方の、少しでも参考になれば嬉しいです。
編集部が実際に見て、食べて、飲んで!美味しかったものを厳選!ばらかもん、舞いあがれ!の聖地として有名になった五島市のふるさと納税返礼品のオススメはズバリこれ!
地元の人、旅行で福江島へ訪れる人、出張で福江島へ訪れる人、夕食と同じくらい昼食、ランチを食べるのに…福江島のランチ情報まとめがない。「五島商店 佐藤の芋屋」の「福江島のこと」の記事の中にも多数のランチ、ディナー情報の記事があります。この「福江島のこと」の「ランチ情報」だけ抜き出してスピンアウトしたのが、「福江島ランチーズ」なのです。
アグリ・コーポレーションでは、現在、事業拡大につき新しい仲間を探しています。地元(長崎県五島市)の方をはじめ、地元以外の移住者、移住を検討されてる方、未経験者、大歓迎です。募集職種、ご応募時の問い合わせFAQ等、詳しくは専用ページにて掲載しています。お問い合わせや質問等ございましたらお気軽にご連絡ください。











