五島市の移住ブームの背景と「失敗」への不安
長崎県の西の果てに浮かぶ五島列島。その中心である「五島市」が、少子高齢化や人口減少に歯止めをかけるべく、本格的な移住支援に力を入れ始めてから数年が経ちます。 関東や関西の都市部で職員が直接イベントを行ってPR活動を展開し、コロナ禍以降はオンラインでの移住相談窓口を拡充。さらに、移住者向けの補助金制度を整備するなど、多角的なアプローチを続けてきました。
加えて、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって「リモートワーク」という新しい働き方が定着したこと、そして「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界遺産登録やテレビドラマの舞台になったことでメディアへの露出が激増。これらの強力な追い風を受け、五島市への移住者はここ数年、右肩上がりで増加しています。 特に、美しい海と自然が残る「三井楽町(みいらくちょう)」は、移住希望者から非常に人気の高いエリアです。
しかし、移住者が増えれば増えるほど、「思っていたスローライフと違った」「こんなはずじゃなかった」と後悔し、結果的に島を離れてしまう「移住失敗」のケースも少なからず発生します。検索窓に「五島移住 失敗」と打ち込む人は、表面的な良い話だけでなく、移住者が直面するリアルなデメリットや苦労を知りたがっているはずです。
そこで今回は、三井楽町に家族で移住して3年目を迎えるRさん(お名前は伏せさせていただきます)に、失敗や後悔も含めた「五島暮らしのリアル」を赤裸々にインタビューしてみました。
移住のきっかけは、美しい「白良ヶ浜」の海に魅せられて

Rさんが五島市への移住を決めた最初のきっかけは、先に島へ移住していた知人の存在と、旅行で訪れた際の圧倒的な大自然の美しさでした。
「一番の決め手は、やっぱり海が信じられないほど綺麗なことですね。特に三井楽町にある白良ヶ浜(しららがはま)の砂浜は、どこまでも白く美しく続いていて、見た瞬間にテンションが最高潮に達しました。もし移住して暮らすなら、絶対にこの海の近くに住みたいとふと思ったのが、ある年の2月のことでした」
思い立ったら行動が早いRさん。その年の8月、ちょうど子供たちの夏休みというタイミングを利用して、車1台にぎゅうぎゅうに生活の荷物を詰め込み、フェリーに乗って五島列島へと渡りました。事前の綿密な長期的計画というよりは、海に魅せられた直感的な決断だったと言います。
移住失敗の種①:お金と補助金に対する「地元民の冷ややかな目」

地方移住といえば、「手厚い補助金がもらえる」「お金をもらって田舎暮らしができる」というイメージを持っている人が多いかもしれません。五島市でも様々な支援金制度が用意されていますが、そこには思わぬ「人間関係の罠」が潜んでいました。
「引っ越してきて早々、ご近所のお店の人に挨拶をした時、『どうせ(市から)沢山お金をもらって来たんでしょ?』と嫌味っぽく聞かれたんです。あれはあんまり良い気分はしませんでしたね」
五島に限らず、地方のコミュニティでは「地元にずっと残り続けている人間よりも、一度島を出たUターン者。Uターン者よりも、全く縁もゆかりもないIターン移住者の方が、優遇されて多額の補助金をもらっている」という、被害妄想に近いイメージを持たれがちです。
「でも実際は、そんなに甘くありません。我が家は同じ九州内からの移住だったこともあり、家族全員で五島市から支給された金額は、引越し費用の一部として充てられた『たったの15万円』のみでした」
就職先が事前に島内で決まっていれば、就職祝金などが追加で支給された可能性もあります。しかしRさんは、「まずは子供たちが島の学校や環境に慣れることを最優先し、仕事は島に行ってからゆっくり自分のペースで探そう」と考えていたため、手厚い補助金の対象からは外れていたのです。 「移住すれば国や市から大金がもらえる」と期待して貯金ゼロで来ると、確実に移住は失敗します。当面の生活を維持できるそれなりの蓄えと資金計画は、絶対に必須です。
移住失敗の種②:住まいと買い物の「離島ルール」と送料問題

移住生活の基盤となる住まい探し。Rさんは五島市が運営する「空き家バンク」を上手く活用しました。
「幸いにも、海にも学校にも近い理想通りの一軒家を、格安の家賃で借りることができました。連れてきた愛猫も飼って良いと言ってくださり、理解のある大家さんには本当に感謝しています」
住まいはスムーズに決まりましたが、苦労したのは生活用品の買い出しです。

「生活に必要な家電製品は、すべて五島で揃えました。最初は『安価なネット通販で買おう』と思っていたのですが、カートに入れて決済画面に進むと、離島ゆえの『追加送料』が信じられないほど高額で……。結局、島内の町の電気屋さんで購入した方がトータルで安いという結果になりました(笑)」
しかし、この「島内で買う」という選択が、後々良い結果を生むことになります。
「五島に長く住んでいる方は、『多少高価でも、地元のお店での付き合いを優先して買うべき』という暗黙のルールのような気持ちが強いみたいです。実際、島内の電気屋さんで買っておけば、台風の後などで急な修理が必要になった時、すぐに駆けつけてもらえるという絶大なメリットがあります」
とはいえ、すべての買い物を島内で完結させるのは困難です。子供のスポーツ用品など、島内のお店では品揃えが限られるものについてはネット通販に頼らざるを得ませんが、常に「高い送料」がネックとしてのしかかります。また、美容室や飲食店も「まずは色々なお店を試してみよう」と開拓中とのこと。ネット通販依存の生活に慣れきっていると、この物流の壁でストレスを抱え、移住を後悔する原因になり得ます。
移住失敗の種③:インフラの落とし穴と水道代の誤算

「都会から田舎へ移住すれば、生活コストが劇的に下がる」と考えている人は多いでしょう。しかし、インフラ面では都会よりも高くつくことがあります。
「私が五島に移住する前に住んでいた地域は、川の水が非常に豊富で、なんと『水道代が無料』だったんです。その代わり微々たる下水道処理代がかかっていた程度でした。だから、五島に来て『水道代が普通に(しかも安くない金額で)かかる!』というのは、私にとって大きな誤算でした」
さらにRさんが不満を漏らすのが、下水道の未整備問題です。
「五島市は下水処理の整備があまり進んでおらず、一部の地域では生活排水のほとんどをそのまま海に流している現状があります。あんなに美しい白良ヶ浜の海に惹かれて移住したのに、環境配慮の面では非常に残念だなと痛感しています」
大自然に囲まれているからこそ、インフラの脆弱さが浮き彫りになります。下水道だけでなく、輸送費が上乗せされるプロパンガス代やガソリン代の高さなども、離島移住者が直面する「生活費の壁」なのです。
移住失敗の種④:子育て環境の過酷さ「部活問題と遠征費」

子育て世代が五島移住を考える際、最も深刻な問題になり得るのが「教育・スポーツ環境の選択肢の狭さ」です。
「子供の学校の話になりますが、児童数が少ないため、クラブ活動の維持問題は本当に深刻です。私は子供二人ともサッカーをさせたかったので、地域のクラブチームに入れました。しかし、通っている小学校のスポーツ少年団は『女子はバレーボール、男子はソフトボール』という選択肢しかありませんでした。 転校して早々に熱烈な勧誘を受けましたが、親としては自分の子供がやりたいスポーツをやらせたいというのが本音です」
さらに中学校に上がると、新たな壁が立ちはだかります。
「小学校のうちは外部のクラブチームだけで過ごせますが、中学校はそれが許されず、必ず学校の『部活動』のどれかに所属しなければならないというルールがあるんです。サッカーも続けたい息子は、部活とクラブチームの両立で体力的にもスケジュール的にも本当にきつそうです」
高校のスポーツ環境も厳しいのが現実です。サッカー部は島内に2つあるのみで、少子化の影響で来年には合併する予定だと言います。
「島内では競争相手がいないため、どうしてもレベルアップに限界があります。そして何より恐ろしいのが『遠征費』です。試合のたびにフェリーに乗って本土へ渡らなければならないため、莫大な交通費や宿泊費がかかります。子供たちに経験を積ませるため、保護者たちは遠征費の寄付金を島内で駆けずり回って募ったりと、本当に大変なんです」
移住失敗の種⑤:移住者あるある「役員の押し付け」
田舎暮らしの人間関係で、多くの移住者が疲弊し、移住失敗を感じる瞬間があります。それが「役員の押し付け」です。
「これは声を大にして言いたいのですが、移住してきたばかりで右も左も分からない人に、いきなり色んな役員を押し付けるのはどうかなと思います!」
五島市に限った話ではありませんが、世帯数や子供の数が少ない地域では、PTAや自治会、子供会の役員決めで毎回のように揉めます。
「『私はもう何度も役員を経験したから免除して!』という主張を通すために、保育園時代までさかのぼって『あの時やった!』とアピール合戦が始まるんです(笑)。そんな中で、しがらみのない移住者は格好のターゲットにされてしまいます」
地域のコミュニティに溶け込むために役員を引き受けるのは有効な手段ですが、断れない性格の人はキャパオーバーになり、「こんな人間関係の煩わしさから逃れるために移住したのに」とストレスを抱えることになります。
移住失敗の種⑥:医療環境の不便さ「薬の処方と選択肢」
離島暮らしにおいて、「医療の不便さ」はQOL(生活の質)に直結します。
「私はひどい片頭痛持ちで、以前住んでいた本土の病院では、1ヶ月分の薬をまとめて処方してもらっていました。しかし、五島の近所の小さな診療所では『2週間分しか一度に出せない』と言われてしまったんです」
そのたびに会社を休んで診察を受けに行かなければならず、非常に面倒だったと言います。 「片頭痛が辛い時に何度も通うのはしんどいので、もう少し融通をきかせて欲しかったのですが、島のルールの壁は難しかったみたいです」

また、眼科でのコンタクトレンズ処方でも不便を感じました。 「コンタクトレンズを作りに行ったら、その眼科では特定のメーカー1社しか取り扱っておらず、自分が使いたいメーカーのものは自分でネット等で取り寄せなければならないと言われました」
医療機関やスーパー、ドラッグストアでも、商品の種類や選択肢が本土に比べて圧倒的に少ないのが離島の宿命です。「欲しいものがすぐに手に入らない」という状況を楽しめない人は、五島移住に向いていないかもしれません。
失敗の種を上回る「五島移住のメリット」と価値観の変化

ここまで、あえて「移住失敗」に繋がりそうな厳しい現実やデメリットを赤裸々に語ってもらいました。では、Rさんは五島移住を後悔しているのでしょうか? 最後に、「五島にずっと住みたいですか?」と尋ねてみました。
「メリットとデメリット、色々比較して考えているところです。幸い、本土の実家の面倒は兄がみているので、すぐに帰らなければならない理由はありません。何より、息子が五島の海と釣りをすっかり気に入っており、『将来は五島の漁師になる!』と豪語している勢いなんです(笑)」
子供が自然の中で逞しく育っている姿を見るのは、親として何よりの喜びです。そして、不満を漏らしていた人間関係についても、実は良い面が多々あると言います。

「役員の押し付けなど面倒なこともありますが、基本的に五島の友達や近所の人たちは本当に親切です。ご近所さんや地元の漁師さんから、ひっきりなしに野菜や魚の『お裾分け』があり、食費がかなり浮くのは本当に助かっています。息子が釣りに行って全く釣れずに落ち込んで帰ってきた時、それを見かねた地元の漁師さんが、立派な真鯛をまるまる1匹ポンとくれたこともありました。 新鮮な五島の魚の刺身は、涙が出るほど美味しいですよ」
五島の不便さが、逆にRさんの価値観を変えつつあると言います。
「確かに五島は不便なことが多いです。でも、たまに用事で島を出て本土に行くと、それだけで物凄く刺激を受けて、『あぁ、もう満足した。早く島に帰ろう』ってなるんです。本土にいた頃のような物欲がすっかりなくなってしまったのかもしれません。今の時代、ネット環境さえあれば仕事も娯楽もどうにかなりますしね」
そして、Rさんは最後に笑いながらこう締めくくりました。
「島外に住んでいる本土の友達に『今、五島列島に住んでいるんだ』と言うと、みんなから凄く羨ましがられるんです。それがちょっと鼻が高くて嬉しいですね!そう思えている時点で、もう私はすっかり五島の魅力に染まっているのかなと思います」
まとめ:五島市への移住を「失敗」に終わらせないために
三井楽町に移住して3年目のRさんのインタビューを通じて、五島市移住のリアルな裏側が見えてきました。
「家賃が安い」「海が綺麗」「魚が美味しい」「人が温かい」といったメリットがある一方で、「送料やガソリン代が高い」「部活の遠征費が家計を圧迫する」「役員を押し付けられる」「医療や買い物の選択肢が少ない」といった、旅行では絶対に分からない厳しい現実が存在します。 「五島移住 失敗」と検索してこの記事にたどり着いた方は、ぜひこの「不便さ」や「人間関係の濃さ」を自分と家族が許容できるかどうかを、移住前にしっかりとシミュレーションしてみてほしいと思います。
不便さを「田舎ならではの面白さ」として楽しみ、島の人々のお裾分け文化に心から感謝できる柔軟性があれば、五島列島は間違いなくあなたの人生を豊かにしてくれる最高の舞台になるはずです。 リモートワークの普及によって移住のハードルは格段に下がった今。メリットもデメリットもすべて包み隠さず受け入れた上で、あなたも五島市での新しい暮らしに挑戦してみてはいかがでしょうか。
編集部が実際に見て、食べて、飲んで!美味しかったものを厳選!ばらかもん、舞いあがれ!の聖地として有名になった五島市のふるさと納税返礼品のオススメはズバリこれ!
地元の人、旅行で福江島へ訪れる人、出張で福江島へ訪れる人、夕食と同じくらい昼食、ランチを食べるのに…福江島のランチ情報まとめがない。「五島商店 佐藤の芋屋」の「福江島のこと」の記事の中にも多数のランチ、ディナー情報の記事があります。この「福江島のこと」の「ランチ情報」だけ抜き出してスピンアウトしたのが、「福江島ランチーズ」なのです。
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