小千谷から長岡へ。発酵と歴史、そして新たなお芋の息吹を感じる旅
新潟県小千谷市にある新谷梨恵子さんの「さつまいも農カフェきらら」で、感動に満ちたお芋尽くしのランチを堪能した私。新谷さんの圧倒的なお芋愛と小千谷への恩返しの情熱に胸を熱くしながら、小千谷の街を後にしました。
今回の新潟旅の後半戦は、新谷さんのカフェへと私を引き合わせてくれた大切な友人(地元の農業女子)が暮らす、新潟県長岡(ながおか)市へと舞台を移します。
長岡市は、信濃川がゆったりと流れる広大な平野に位置し、小千谷市と比べるとどこか都会的で洗練された雰囲気が漂う、新潟県第2の都市です。「長岡まつり大花火大会」の圧倒的なスケールで全国にその名を知られていますが、それだけでなく、古くから酒造りや味噌・醤油の醸造が盛んな「発酵の街」としてのディープな魅力、そして歴史的な歩みを今に伝える平和学習の街としての重要な側面も持っています。
今回の旅のミッションは、お芋の魅力にとどまらない長岡の奥深い観光名所を巡ること、そして諦めかけていた「新潟の最新さつまいもスイーツ事情」を現地で徹底調査することです。
長岡に暮らす友人の全面的なプロデュースのもと、テレビドラマで話題になった発酵の街の聖地巡礼から、行列必至のご当地グルメ、そして奇跡的に出会った素晴らしいお芋スイーツ専門店での爆買いまで、驚きと興奮に満ちた長岡旅の全貌を、情景豊かにレポートします!
第一章:ドラマ『居酒屋新幹線2』の聖地!発酵の街「摂田屋」を五感で歩く
長岡に到着した2日目の午後、友人に真っ先にリクエストして連れて行ってもらったのが、長岡駅から車で約15分ほどの場所に位置する「摂田屋(せったや)」という地区です。
ここは、江戸時代から続く独自の醸造文化が今なお息づく街で、一角に一歩足を踏み入れると、古い土蔵や木造の風情ある建物が立ち並ぶ城下町のような美しい景観が広がっています。実はこの摂田屋、MBS/TBS系で放送された人気ドラマ『#居酒屋新幹線2』の長岡編の舞台として登場し、全国のグルメ・お酒ファンから熱視線を浴びている聖地なのです。 駐車場に車を停めれば、すべてのスポットを歩いてのんびりと巡ることができる、散策に最高のエリアです。
① 400年の歴史を味わう「吉乃川(よしのがわ)」の酒蔵

まず最初に向かったのは、新潟を代表する日本酒の銘醸蔵である「吉乃川(よしのがわ)」です。 敷地内には、吉乃川の長い歴史や、かつて実際に使われていた巨大な木桶、伝統的な酒造りの道具が美しく展示されているミュージアムがあり、お酒の知識を深く学ぶことができます。
館内には、ファンには堪らない「日本酒の試飲ができるお洒落なバーカウンター」が併設されています。券売機で手軽に飲み比べセットのチケットを購入し、おつまみには新潟の名物である分厚い「油揚げ(あぶらあげ)」を注文。 日本酒が大好きな友人が、羨ましそうにこちらの様子を覗き込んでくるのを横目に(友人はこの日、私のために車の運転を買って出てくれていたためノンアルコールです。本当に感謝!)、新潟の清らかな水と米が育んだ、キリッと澄んだ極上の日本酒を心ゆくまで堪能させていただきました。

バーの壁にはQRコードがあり、スマートフォンで簡単に「日本酒診断」ができるアプリも用意されていました。いくつかの質問に答えるだけで、自分の好みにぴったりの日本酒の銘柄を提案してくれるため、これからお土産を購入する際の非常に素晴らしい参考になります。私もその診断結果を片手に、併設された売店で実際に一升瓶や限定ボトルを手に取り、最高の日本酒をお土産として購入しました。
② 目の前でパチパチと焼き上がる「江口だんご」の口福

吉乃川を後にして、ほのかにお酒や麹の心地よい香りが漂う蔵と蔵の間の細い小道をすり抜けるように歩いていくと、趣のある立派な和風庭園が見えてきます。ここが、長岡を代表する老舗和菓子店「江口(えぐち)だんご」さんです。
ちょうど少しお腹が空いてきたタイミングだったため、名物の「みたらし団子」を注文。なんとここでは、注文を受けてから職人さんがお団子を目の前の焼き台でパチパチと香ばしく焼き上げ、特製の醤油タレをたっぷりと絡めて提供してくれるのです。 美しく手入れされた日本庭園を大きな窓から眺めながら、ゆっくりとお座敷のカフェスペースで食べる出来立てのお団子は、お餅のコシと甘辛いタレが絶妙に絡み合い、言葉にならないほどの口福(こうふく)でした。長岡名物の「醤油赤飯」も狙っていたのですが、この日はあまりの人気にすでに品切れ。次回への宿題となりました。
③ 厳選された調味料が集まるお洒落な空間「発酵ミュージアム」

さらに小道を少し歩いた先にあるのが、摂田屋の醸造文化を発信する拠点「発酵ミュージアム(米蔵)」です。 古い米蔵をリノベーションして造られた店内は、非常に洗練されたお洒落なセレクトショップのような空間。新潟県内から厳選されたこだわりの日本酒をはじめ、地元の老舗が造る醤油や味噌、発酵技術を活かした珍しい調味料やコスメなどがズラリと美しくディスプレイされています。
お昼どきには、地元の美味しいお味噌を贅沢に使った手作りのおにぎりなども販売されているそうです。私たちが訪れたのは閉店時間の本当にギリギリ前だったのですが、お店のスタッフの方々が嫌な顔一つせず、非常に親切に街の歴史や商品のこだわりを説明してくださいました。人の温かさに触れ、心がじんわりと温まりました。
第二章:長岡の熱い夜と、背筋が伸びる「平和学習」の時間
せっかくグルメの聖地!「スタミナ苑」の餃子とラーメンの衝撃
夕食は、友人のご主人がわざわざ仕事を終えて車を運転して迎えにきてくださり、4人で長岡で一番熱いと言われる夜の街へと繰り出しました。 予約してくれていたのは、TBS系の人気番組『バナナマンのせっかくグルメ!!』でも紹介され、全国的に話題となった超人気焼肉店「スタミナ苑」さんです。

お店に到着すると、入り口の前には驚くほどの大行列。広い店内も地元の人々や観光客で超満員、熱気にあふれて大盛況でした。地元でも予約を取ることすら困難なプレミア店だそうです。 このお店は新鮮で肉厚な「タン(牛タン)」が絶品として有名なのですが、実は地元・長岡の人々がこの店を訪れた際、焼肉のシメとして絶対に全員が注文する裏の主役メニューが「餃子」と「ラーメン」なのです。

「焼肉屋さんなのに、ラーメン?」と不思議に思いながら注文したのですが、目の前に運ばれてきたラーメンスープを一口すすって、その完成度の高さに驚愕しました。コクのある醤油ベースのスープに、肉の旨味がしっかりと溶け込み、専門店をも凌駕するほどの圧倒的な美味しさです。大ぶりでジューシーな餃子との相性も抜群で、「こんなに美味しいお店が身近にあるなんて、長岡の人が本当に羨ましい!」と、4人でコンロを囲みながら大満足の夜を過ごしました。その日は、長岡駅前のホテルに大満足で宿泊しました。
長崎と長岡を結ぶ歴史。山本五十六記念館での深い学び
長岡2日目の午前中は、新幹線の出発時間までの時間を利用して、友人に長岡の街の歴史を深く知るための重要な場所へと案内してもらいました。
訪れたのは、太平洋戦争時の連合艦隊司令長官として知られる「山本五十六(やまもといそろく)記念館」、そして長岡大空襲の悲劇と復興の歩みを伝える「長岡戦災資料館」の2箇所です。 私の故郷である長崎県には、原爆資料館という世界的に有名な平和学習の場があります。幼い頃から何度もそこに足を運んできた私ですが、ここ長岡の資料館に展示されている、実際に街を焼き尽くした焼夷弾の残骸や、当時の市民のリアルな生活の遺品の数々、そして命の尊さを訴える生々しい資料の数々は、長崎の資料館以上に胸に迫るものがあり、思わず言葉を失い、真剣な眼差しで見入ってしまいました。
激しい戦火から立ち上がり、今では世界一の長岡花火を打ち上げるまでに復興を遂げたこの街の強さと優しさの理由が、歴史を学ぶことで深く腑に落ち、背筋がピンと伸びるような、非常に意義深い時間を過ごすことができました。
第三章:運命の出会い!長岡のお芋スイーツ専門店「長岡いも奉行」での爆買いレポ
午前中の歴史学習を終え、いよいよ旅の最終目的である「新潟の最新お芋スイーツ事情」の調査へと向かいます。
実は今回の新潟旅行の前、5月下旬に新潟県内で初めて本格的な「おいも万博」が開催されるという情報をキャッチしていました。しかし、事前に出店者リストを隅々までチェックしてみたところ、驚くべきことに「新潟県内からのさつまいも専門店の出店が一つもない」という衝撃の事態に直面したのです。 「新谷梨恵子さんがこれほど新潟にお芋文化を広めようと血のにじむような努力をされているのに、新潟の本土側には、まだ気軽に立ち寄れるようなさつまいもスイーツ専門店は存在しないのだろうか……」と、半分諦めかけていました。
江口だんごの壁に貼られた「1枚のチラシ」が奇跡を起こす
ところが、奇跡は前日の摂田屋散策中に起こりました。先ほどご紹介した「江口だんご」さんの敷地内の壁に、何気なく1枚のイベントチラシが貼られていたのです。そこに書かれていたのが、お芋スイーツ専門店「長岡いも奉行(いもぶぎょう)」というお店の名前でした! しかも場所は、長岡駅からJR線でわずか一駅の「宮内(みやうち)駅」前という、新幹線に乗る前でも十分にアクセスしやすい絶妙な距離。 「これだ!最終日の締めくくりにふさわしい目的地が見つかった!」と、友人と共に大興奮でお店へと向かいました。
お店は長岡農業高校のすぐ近く、宮内駅前の交差点の角にありました。店舗の隣にはありがたいことに5台分の専用駐車場も完備されています。 建物の前に到着すると、遠くからでも一目で分かるほど、たくさんの鮮やかな「お芋」ののぼり旗が風にたなびいており、お芋マニアの心を激しく揺さぶります。
種類が多すぎる!魅力的なお芋メニューの嵐

基本はテイクアウト用の窓口での販売スタイルですが、お店の方に許可をいただき、お洒落な店内の様子も見学させていただきました。靴を脱いでリラックスして上がれる小さなイートインスペースも数席用意されており、そこでは先客の女性グループや家族連れが、お店の看板メニューである美しい「おいもんぶらんパフェ」を楽しそうに頬張っていました。
私たちは新幹線の時間が迫っていたため、今回はテイクアウトできるメニューに絞って注文することに。しかし、メニュー表を開くとスイートポテトからチップス、コッペパンまであまりにも種類が多すぎて、どれにしようか本当に迷ってしまいます。 熟考の末、私は以下のメニューを豪快に一気注文しました!
- おいもシェイク(この日は非常に気温が高く暑かったため、最高の水分補給になりました!)
- スイートポテト
- おいもチョコチップス
- おいもコッペパン(新商品)
- おいもクレープ
- 紅はるかの冷凍焼き芋(約500gのずっしりサイズ)
このお芋スイーツの嵐のような注文風景を横で見ていた友人は、「あんた、一体どれだけお芋が好きなのよ……」と、あきれ顔で苦笑いしていました(笑)。
地域に根ざした、こだわり素材の引き算と足し算

こちらの「長岡いも奉行」さんのスイーツは、どれも素材へのこだわりが凄まじいものばかりでした。 人気のパフェやシェイクには、前日に新谷さんのカフェでもお話を伺った、新潟が世界に誇る非常に希少な高級ミルク「加勢(かせい)牧場」のガンジー牛乳で作られた極上のソフトクリームやミルクがふんだんに使用されています。だからこそ、お芋の濃厚さに負けない、ミルク本来のみずみずしいコクとスッキリとした後味が楽しめるのです。

お土産に持ち帰った「スイートポテト」は、可愛らしいひとくちサイズ。驚いたのは、お芋の土台の底にサクサクとした香ばしいパイ生地が薄く敷かれていたことです。ねっとりとしたお芋の甘みに、パイのサクサク感とバターの香ばしさがプラスされ、何個でも食べられてしまう素晴らしい完成度でした。

そして、大注目なのが「おいもクレープ」です。これはなんと、すぐ近くにある「長岡農業高校」の生徒たちとお店がタッグを組み、共同開発によって完成させたという、まさに地域密着型の素晴らしいコラボスイーツなのです! トッピングのクリームは、王道のホイップクリーム、濃厚なカスタード、子どもに大人気のチョコレートの3種類から自分好みに選ぶことができます。高校生たちの「地元の農業とお芋を盛り上げたい!」というフレッシュな情熱が形になったクレープ、美味しくないわけがありません。

後から後から途切れることなく地元の学生や主婦、車で乗り付けるお客さんがひっきりなしにやってくる超人気店のため、スタッフ3人の皆さんは目が回るほどの忙しさ。ゆっくりとお話を伺うことはできませんでしたが、使用しているさつまいもは、主に新潟県産の「紅はるか」であると優しく教えてくださいました。
第四章:北上するさつまいも前線。新潟の知られざるお芋栽培の「起爆剤」
長岡いも奉行での素晴らしい出会いをきっかけに、私は友人から「新潟県における近年のさつまいも栽培の急激な進化」について、非常に興味深い農業の現実を教えてもらいました。
実は、新潟県内でさつまいもの大規模な商業生産が盛んになってきたのは、歴史的に見ればつい最近のことなのだそうです。これまで米一択だったこの大国において、なぜ今、さつまいも(特に紅はるか)の産地化が急速に進んでいるのでしょうか。そこには、地球温暖化の影響に伴う「栽培前線の北上」という事実に加え、雪国ならではの既存のインフラを活用した、見事な「転作の成功ストーリー」が隠されていました。
葉タバコ乾燥施設をそのまま「熟成貯蔵庫」へ
新潟県北部に位置する胎内(たいない)市では、かつて基幹産業であった「葉タバコ」の栽培が減少したことに伴い、それに代わる新しい地元の特産品として、JAが主導となって「紅はるか」の転作・大規模栽培に総力を挙げて取り組んできました。
胎内市がさつまいもの一大産地として大成功を収めた最大の起爆剤。それは、この地域がもともと水はけが良くさつまいも栽培に最適な「砂丘地(さきゅち)の畑」であったことに加え、「葉タバコの乾燥施設を、そのまま収穫後のさつまいもの熟成・キュアリング貯蔵庫として有効活用したこと」にあります。
さつまいもは、収穫した後に一定の温度と高湿度で1ヶ月以上寝かせる「熟成」を行うことで、デンプンが糖化してあのねっとりとした甘みへと進化します。葉タバコを乾燥させるための温度・湿度管理システムが備わった巨大な施設は、さつまいもを大量に熟成・保管するための貯蔵庫として、まさに「奇跡的」と言えるほど完璧に条件が合致したのです。新たな巨額の設備投資をすることなく、既存のインフラを応用して高品質な熟成紅はるかを安定供給できる仕組みを確立したことで、生産量は一気に拡大していきました。
ブランド芋「いもジェンヌ」の台頭と、五島列島の危機感
また、新潟市の西区では、砂丘地で育てられた極上の紅はるかを「いもジェンヌ」という非常にお洒落な名前でブランド化し、官民一体となってPRを推進しています。 単に生芋を販売するだけでなく、いもジェンヌを使ったジャムやチップス、お菓子などの高級感ある加工品も次々と製造。新潟の有名ご当地スーパーである「原信(はらしん)」の棚にも、このいもジェンヌの商品が美しくコーナー展開されて並んでいるのを見かけました。
新潟のお芋文化は、これから5年、10年をかけて、さらに凄まじいスピードで発展していくことは間違いありません。 このライバルたちのたくましい姿を目の当たりにし、私は一人の島民として、深い感銘を受けると同時に、心地よい「危機感」を抱きました。
「新潟でこれほど高品質なさつまいもが作られていることを私が知らなかったのと同じように、本土の人々にとっては、長崎県の五島列島で有機さつまいもの生産がこれほど盛んに行われていることは、意外と知られていないのではないか」
気候の温暖化によって、これまで九州南部や離島が独占していたさつまいもの優良産地というアドバンテージは、確実に北上しています。 私たちの故郷、五島列島のお芋も、大自然の恵みやオーガニック(有機栽培)への圧倒的なこだわりをもっともっと全国、そして世界へ向けて積極的に頑張ってPRしていかなければ、あっという間にこの情熱的なライバルたちに先を越されてしまう。新潟の地で素晴らしいお芋スイーツを食べながら、地方が生き残るためのマーケティングの重要性を改めて強く再確認させられました。
第五章:新潟旅の完璧なフィナーレ!生姜醤油ラーメンから新幹線、そして五島への帰還
お芋の未来について熱く考察した後は、新潟旅行の最後の食事として、長岡いも奉行のすぐ近くにある、長岡で圧倒的な人気を誇るご当地ラーメンの聖地「青島(あおしま)食堂」さんへ向かいました。

お店の前には、絶句するほどの凄まじい大行列が道路に沿って伸びていました。 しかし、お芋マニアの私に死角はありません。先ほどいも奉行で購入したキンキンに冷えた「おいもシェイク」を片手に、炎天下の行列に並びながら冷たくて甘いシェイクを堪能するという、これ以上ない贅沢な待ち時間を過ごすことで、退屈することなく行列を完全攻略しました(笑)。
寒さを溶かす知恵:長岡名物「生姜(しょうが)醤油ラーメン」

ようやく店内に案内され、運ばれてきた伝統の醤油ラーメンをいただきます。 一見すると、昔懐かしい極めてシンプルな醤油ラーメンのように見えるのですが、スープを口に含んだ瞬間、鼻に抜ける鮮烈な香りとピリッとした心地よい刺激があります。スープのベースに、すりおろした「生姜(ショウガ)」がたっぷりと贅沢に溶かし込まれているのです。
雪深く、冬の寒さが極限まで厳しい長岡において、労働者や住民たちの身体を芯からポカポカと温めるために生まれたという、元祖・生姜醤油ラーメン。 あっさりとした口当たりのスープの中に、生姜の爽やかさと、チャーシューの煮汁の濃厚で深いコクが絶妙に調和しており、縮れ麺にスープがこれでもかと絡みつきます。とんこつ至上主義だった私の偏見が、見事に木端微塵に打ち砕かれるほど、五臓六腑にしみわたる感動的な美味しさでした。
ぽんしゅ館の誘惑と、幻の「醤油赤飯」リベンジ

大満足でラーメンを平らげた後、友人の運転で長岡駅へと戻り、いよいよ新幹線に乗る直前のラストスパートです。 駅の構内にある、新潟県内の全蔵元の日本酒(約170種類)がズラリと自動販売機のように並ぶ夢の施設「ぽんしゅ館」へと突撃しました。

ここでは、受付で500円を支払うと「5枚の専用コイン」と小さな「おちょこ」を渡されます。お酒の銘柄ごとに必要なコインの枚数(1枚〜3枚など)が異なるため、自分の直感と好みに合わせて、3種類の極上の新潟の日本酒をワンコインで楽しく試飲させていただきました。すっかり新潟の淡麗辛口の味に魅了された私は、売店で自宅用に2種類の日本酒を即決で購入。
さらに嬉しいことに、ぽんしゅ館の売店コーナーにて、先ほど江口だんごさんの実店舗で売り切れていて涙を呑んだ、長岡の究極のソウルフード「醤油赤飯(しょうゆせきはん)」が奇跡的に販売されているのを発見しました! この醤油赤飯も、ドラマ『居酒屋新幹線2』の劇中で主人公が絶賛していた幻のメニューです。一般的な赤飯のように小豆でピンク色に染めるのではなく、地元の美味しい醤油を使っておこわを茶色く炊き上げ、大粒の金時豆を混ぜ込むという、長岡独自の伝統的なお赤飯です。こちらも新幹線のお供として迷わず購入しました。
2日間、仕事の合間を縫ってずっと車を運転し、最高の長岡観光をプロデュースしてくれた友人に、心からの感謝とお別れを伝え、名残惜しさを感じながら上越新幹線へと乗り込みました。 「次は絶対に、私たちが家族みんなで五島列島へ遊びに行くからね!その時はHotel IMOに泊めてよ!」と力強く笑顔で言ってくれた友人の言葉が、旅の最高のギフトとなりました。
新幹線のクレープから、太古丸のレンジで仕込む「発酵塩麹焼き芋」
東京へ向かう上越新幹線の車内では、車窓から流れる新潟の美しい景色を眺めながら、長岡いも奉行で買った「おいもクレープ」をおやつとして贅沢にいただきました。高校生たちの情熱が詰まったクレープは、モチモチの生地とクリームの甘みがお芋の風味を引き立てており、旅の疲れがスーッと癒やされていくようでした。
東京駅に到着した後、浜松町でのビジネスの用事をテキパキと済ませ、夜に羽田空港へ。 帰りの飛行機が機材繰りの関係で約30分ほど遅延してしまい、お腹がペコペコに空いてしまったため、ロビーのベンチに座り、夕食代わりにいも奉行で購入しておいた「おいもコッペパン」を頬張ることにしました。
旭屋の揚げパンと、いちご&お芋の想定外のマリアージュ

このコッペパンは、地元で絶大な人気を誇る老舗パン屋さん「旭屋(あさひや)」の非常にふっくらとした上質なパンを使用しています。私は注文時、お店のおすすめに従って「普通のコッペパン」から「揚げパン」へとカスタマイズ変更してもらっていたのですが、これが大正解でした! 表面に優しい甘みのきび砂糖がサラサラとまぶされた揚げパンは、どこか懐かしい昭和の給食を思い出させる最高の食感。そのパンの切れ目の間に、新潟県産のブランドいちごを贅沢に使った甘酸っぱい「いちごクリーム」と、濃厚な「おいもクリーム」が美しくサンドされています。 「いちごとお芋って、本当に合うのかな?」と最初は少し半信半疑だったのですが、一口食べてみれば、いちごのみずみずしい酸味が、お芋の濃厚なコクとずっしりとした甘みを引き締め、驚くほど上品で爽やかなマリアージュを生み出していました。地域を愛する素材の足し算に、改めて脱帽です。
飛行機で福岡空港へと飛び、そこから博多港へ移動。五島列島へ向かういつもの深夜の定期フェリー「太古(たいこ)丸」へと乗り込みました。
旅の最後の伏線回収。星野屋本店の塩麹が起こした奇跡
翌朝、フェリーの客室の窓から、東シナ海の水平線から昇る美しい朝日の光を浴びながら、いよいよ今回の長崎〜新潟大移動の旅を締めくくる最後の朝食の時間となりました。 取り出したのは、長岡いも奉行で買った「紅はるかの冷凍焼き芋(約500g)」です。

博多港を出発して数時間、冷凍状態だったお芋は、自宅から持参していた保冷バッグと保冷剤のおかげで、完全に溶けることなく「全体がほんのり冷たい、最高のセミフレッド状態」を維持していました。 これを、フェリー太古の船内に設置されている自由利用の電子レンジに入れ、500Wで数十秒、中心が熱々になるまで一気に温めます。 実はこれ、私のお芋の師匠である新谷梨恵子さんが、4月に五島へ来てくれた時にホテルの部屋で実際にやっていた「旅先で焼き芋を一番美味しく食べるプロの技」を、そのままリスペクトして真似してみたものです(笑)。
レンジの扉を開けると、車内にプーンとお芋の信じられないほど甘く香ばしい匂いが立ち込めました。フフッと笑いながら、熱々のお芋をふたつに割って口へと運びます。
「…! なんて甘くて、奥深い味なんだろう!」
信じられないほどのねっとり感と、単なる砂糖の甘みとは違う、深いコクと旨味が押し寄せてきました。 パッケージの解説を読んでみると、なんとこのいも奉行の焼き芋は、「焼く前に、お芋の表面に特別な『塩麹(しおこうじ)』を丁寧に塗ってから、時間をかけてじっくりと焼き上げている」のだそうです。塩味が甘みを引き立てるだけでなく、麹の酵素が芋のデンプン分解をさらに加速させるという、驚きの調理科学です。
そして、その使われている塩麹の製造元を見て、鳥肌が立ちました。 使われていたのは、私が昨日、摂田屋の街を歩いて観光した際に目の前を通った、江戸時代創業の超老舗蔵『星野屋(ほしのや)本店』の特製塩麹だったのです!
「私が昨日、友人と感動しながら歩いた発酵の街・摂田屋の歴史と文化が、最後の最後、このフェリーの上で食べるお芋の味の中で、すべて一本の美しい線となって繋がった…!」
新谷梨恵子さんという偉大な先達、長岡の素晴らしい友人夫婦、そして五島と新潟の土が育んだお芋たちのチカラ。たくさんの人の優しさと大自然の恵みに支えられ、これ以上ないほどドラマチックで充実した、最高の新潟旅行の幕が閉じました。 口いっぱいに広がる塩麹とお芋の甘みを噛みしめながら、私は船窓の向こうに見えてきた故郷・五島列島の島影に向かって、「さあ、私も負けずに、五島のお芋を世界に広めるために明日からまた全力で頑張るぞ!」と、新しい情熱の炎を静かに燃え上がらせるのでした。
【店舗情報】ご紹介した長岡の名店
焼き芋とおいもスイーツ 長岡いも奉行
住所: 新潟県長岡市宮内3-1-16(JR宮内駅から徒歩すぐ、長岡農業高校近く)
TEL: 0258-94-5393
営業時間: 11:00 ~ 19:00
定休日: 火曜日・水曜日
設備: 専用駐車場5台完備、店内にミニイートインスペースあり
※大人気のおいもんぶらんパフェや、長岡農業高校コラボクレープ、摂田屋・星野屋本店の塩麹を使った極上焼き芋など、新潟の芋文化の最先端を味わえる名店です。長岡を訪れた際は、ぜひ青島食堂のラーメンとセットで立ち寄ってみてください!








