仁田美鈴
五島列島で生まれ育って40年。地元の雄大な自然や人の温かさはもちろん、島暮らしならではの「不便さ」さえも愛する生粋の五島人です。幼少期から、小学校のアルバムに食べている写真が残るほどの無類のさつまいも好き。「焼き芋にキムチをトッピング」という通な食べ方をこよなく愛しています。地元民だからこそ知るディープな情報や、観光・出張で訪れる方に本当に役立つ現地のリアルな魅力を、心を込めてお届けします。
福江島への旅を計画するとき、どの季節に訪れるのが一番良いのだろうかと、頭を悩ませる方も少なくないかもしれません。世界遺産の教会群や美しい海といった見どころもさることながら、旅の醍醐味は、やはりその土地ならではのイベントや祭りに触れることにあるのではないでしょうか。この記事では、福江島で一年を通して開催される主要なイベントと祭りを、年間スケジュールに沿って網羅的にご紹介します。国の重要無形民俗文化財に指定される奇祭から、島の豊かな自然を満喫できる季節の催しまで、その内容は実に多彩です。この記事を読めば、あなたの旅の目的にぴったりの時期がいつなのか、その答えがきっと見つかるはずです。
福江島のイベント&祭り 一目でわかる年間スケジュール

温暖な気候に恵まれた福江島は、一年を通して季節の移ろいを感じられる多彩なイベントや祭りで賑わいます。伝統を今に伝える勇壮な祭りから、島の豊かな自然を全身で体感できる花のイベント、そして自らの限界に挑戦するスポーツの祭典まで、その魅力は尽きることがありません。いつ訪れても島の個性に触れられる、そんな福江島のイベントスケジュールを一覧にまとめました。旅の計画を立てる際の参考に、ぜひご活用ください。
| 開催時期 | イベント・祭り名 | 主な開催場所 |
|---|---|---|
| 1月第3日曜日 | 下崎山地区の奇祭 ヘトマト | 五島市下崎山地区 |
| 1月下旬~3月上旬 | 五島椿まつり | 五島市各所 |
| 4月上旬 | 魚津ヶ崎 菜の花まつり | 魚津ヶ崎公園 |
| 5月上旬 | 富江半島ブルーライン健康ウォーク大会 | さんさん富江キャンプ村 |
| 5月下旬~6月中旬 | 魚津ヶ崎あじさいまつり | 魚津ヶ崎公園 |
| 6月中旬 | 五島長崎国際トライアスロン大会 | 福江島全域 |
| 8月13日~15日 | チャンココ | 五島市各所 |
| 9月下旬~10月上旬 | 福江みなとまつり | 福江港周辺 |
| 10月中旬 | 魚津ヶ崎コスモスまつり | 魚津ヶ崎公園 |
ここに掲載している開催時期は、例年の目安です。 祭りやイベントの日程は、天候や社会情勢によって変更または中止となる場合もございますので、お出かけになる直前には、必ず公式サイトなどで最新の情報をご確認ください。
福江島の伝統文化に触れる祭りイベント
福江島には、古くから受け継がれてきた歴史と人々の祈りが息づく、個性豊かな祭りが数多く存在します。島の風土に根ざしたこれらの伝統行事は、訪れる人々の心を捉えて離さない不思議な魅力に満ちあふれているのです。ここでは、島の文化を肌で感じることができる、代表的な3つの祭りをご紹介します。
福江みなとまつり 五島の歴史を表現するねぶた

五島市最大のイベントとして知られる「福江みなとまつり」は、毎年多くの観光客や地元の人々で賑わう、島の夏を代表する祭りです。 なんといっても一番の見どころは、夜の街を彩る勇壮な「ねぶた」の運行でしょう。 遣唐使やカトリックの歴史、民話といった五島の歴史や文化を題材にした巨大なねぶたが、お囃子の音色とともに練り歩く様子は圧巻の一言です。 色鮮やかな光を放ちながら目の前を通り過ぎるねぶたの迫力は、まさに息をのむほどの美しさで、観る者の心に深く刻み込まれます。 祭りのフィナーレには福江港から花火が打ち上げられ、島の夜空を華やかに染め上げます。
| 開催時期 | 開催場所 | 主な見どころ |
|---|---|---|
| 例年9月下旬の土日 | 福江市街地、福江港周辺 | 五島の歴史を題材にしたねぶたの運行、花火大会、郷土芸能など |
下崎山地区の奇祭 ヘトマト

その名を聞いただけでは一体どんな祭りなのか想像もつかない、それが下崎山地区に伝わる「ヘトマト」です。国の重要無形民俗文化財にも指定されているこの祭りは、毎年1月の第3日曜日に開催され、豊作や大漁、無病息災を祈願します。 「奇祭」と称される所以は、その独特すぎる一連の行事にあります。奉納相撲に始まり、新婚女性が酒樽の上で行う羽根つき、そして顔や体に「ヘグラ」と呼ばれるススを塗りたくった若者たちが、見物客にもおかまいなしにススを塗りつけて回るのです。 逃げ惑う子どもや女性の姿も見られますが、このヘグラには無病息災のご利益があるとされ、会場は終始、笑顔と活気に包まれます。 クライマックスには、巨大なわらじに乗せられた女性が担がれ、胴上げされるという、他では決して見ることのできない光景が繰り広げられます。 祭りの語源や起源は定かではないという、謎に満ちた点もまた魅力の一つです。
| 開催時期 | 開催場所 | 主な見どころ |
|---|---|---|
| 毎年1月の第3日曜日 | 五島市下崎山地区 白浜神社周辺 | ヘグラ(スス)塗り、酒樽での羽根つき、大わらじでの胴上げなど |
先祖を供養する念仏踊り チャンココ

お盆の時期になると、福江島のあちこちから「カン、カン」という鉦の音と、太鼓の音が聞こえてきます。これが、五島の夏の風物詩「チャンココ」の合図です。 チャンココは、お盆に帰ってくる先祖の霊を供養するために踊られる念仏踊りの一種で、その歴史は800年以上前に遡るとも言われています。 腰みのをまとい、カラフルな飾りがついた花笠で顔を隠した踊り手たちが、首から下げた太鼓を叩きながら市内を練り歩き、初盆を迎えた家や墓前で踊りを奉納します。 「チャン」は鉦の音、「ココ」は太鼓の音を表すといわれ、そのどこか物悲しくもリズミカルな音色は、夏の暑さの中に一抹の哀愁を感じさせます。 地区によって衣装や踊り方が少しずつ異なるのも特徴で、その違いを見比べるのも楽しみ方の一つです。また長崎県では、お墓で子供たちが花火をして、祖先の霊を賑やかに迎えます。
| 開催時期 | 開催場所 | 主な見どころ |
|---|---|---|
| 毎年8月13日~15日 | 五島市内の各地区(初盆の家、墓地、商店街など) | 独特の衣装と念仏歌、鉦と太鼓が織りなす哀愁漂う踊り |
福江島の豊かな自然を楽しむ季節のイベント
福江島の魅力は、何と言ってもその雄大な自然景観にあります。季節の移ろいとともにその表情を変える美しい風景は、私たちの心を捉えてやみません。島では、その季節ならではの自然を存分に満喫できる花祭りが各所で開催され、多くの観光客や地元の人々で賑わいを見せます。春の菜の花に始まり、夏にはあじさい、秋のコスモス、そして冬の椿と、一年を通して私たちの目を楽しませてくれるのです。
【春】魚津ヶ崎 菜の花まつり

春の訪れとともに福江島を鮮やかに彩るのが、魚津ヶ崎公園の菜の花です。東シナ海を一望できる岬に広がる公園が、まるで黄色い絨毯を敷き詰めたかのような景色に変わります。まつりの期間中は、約400万本もの菜の花が咲き誇り、青い海と空とのコントラストはまさに絶景と言えるでしょう。 イベント当日はステージアトラクションや特産品の販売なども行われ、春の穏やかな一日をのんびりと過ごすには最高の場所です。 夜にはライトアップも行われ、昼間とはまた違った幻想的な雰囲気に包まれます。
| 開催時期 | 場所 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 毎年4月上旬 | 魚津ヶ崎公園 | ステージアトラクション、軽食・特産品販売、抽選会、夜間ライトアップ |
【夏】魚津ヶ崎あじさいまつり
梅雨の季節、少し物憂げな空模様を明るくしてくれるのがあじさいの花々です。菜の花と同じ魚津ヶ崎公園では、初夏になると色とりどりのあじさいが咲き誇ります。 公園内の花畑を埋め尽くす青や紫、白といった鮮やかなあじさいのグラデーションは、訪れる人々の心を和ませてくれるに違いありません。雨に濡れてしっとりと輝くあじさいと、その向こうに広がる海の景色は、この時期にしか出会えない特別な風景です。 まつりでは、地元産品の販売やステージイベントも開催され、賑わいを見せます。 また、夜間にはあじさい園がライトアップされ、幻想的な夜の散策を楽しむこともできます。
| 開催時期 | 場所 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 毎年6月上旬 | 魚津ヶ崎公園 | ステージアトラクション、軽食・特産品販売、抽選会、夜間ライトアップ |
【秋】魚津ヶ崎コスモスまつり

秋風が心地よく吹き始める頃、魚津ヶ崎公園は再びその姿を変えます。主役は、可憐なコスモスの花々です。1万平方メートルを超える広大な畑に、ピンクや白など約150万本から160万本のコスモスが咲き乱れる光景は圧巻の一言。 秋の澄んだ青空の下、風にそよぐ無数のコスモスを眺めていると、時間が経つのも忘れてしまいそうです。まつりの期間中は、ステージイベントや抽選会などが催されるほか、夜間のライトアップも行われ、昼とは異なるロマンチックな雰囲気を楽しめます。
| 開催時期 | 場所 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 毎年10月中旬 | 魚津ヶ崎公園 | ステージイベント、軽食・特産品販売、抽選会、夜間ライトアップ |
【冬】五島椿まつり

冬の福江島を象徴する花といえば、やはり椿ではないでしょうか。「東の大島、西の五島」と称されるほど椿の自生地として知られる五島では、毎年2月下旬から3月上旬にかけて「五島椿まつり」が開催されます。 このまつりは、島内各所を会場として、椿に関する展示やウォーキングイベント、特産品の販売など多彩な催しが行われる島を挙げての一大イベントです。 幻の銘花と謳われる「玉之浦」が生まれた地でもあり、古くから椿油などで人々の生活と深く関わってきた歴史を感じることができます。 椿色に染まる冬の五島で、その魅力に触れてみてはいかがでしょうか。
| 開催時期 | 場所 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 毎年2月下旬~3月上旬 | 五島港公園、福江武家屋敷通りふるさと館ほか島内一帯 | 椿に関する展示、限定ツアー、ウォーキングイベント、グルメフェス、ワークショップ |
福江島でアクティブに楽しむスポーツイベント
福江島は、その豊かな自然景観を活かしたスポーツイベントの舞台としても知られています。国内外から多くのアスリートが集まる本格的な大会から、家族連れで気軽に参加できるイベントまで、島の魅力を体全体で感じられる催しが年間を通して開催されています。
五島長崎国際トライアスロン大会

「バラモンキング」の愛称で知られ、毎年6月に開催される日本を代表するトライアスロン大会です。 アジアでも屈指の過酷さを誇るロングディスタンスのレースとして、全国、そして海外からも多くの鉄人たちがこの福江島に集結します。 スイム、バイク、ランの3種目で競われ、特にバイクコースは島の美しい海岸線や起伏に富んだ地形を活かしたタフで戦略的なコースとして有名です。 島民の温かい声援が途切れることなく続く光景は、この大会ならではの魅力。 参加する選手だけでなく、観戦する人々にも大きな感動を与えてくれる、島全体が一体となる熱い一日です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開催時期 | 例年6月 |
| 場所 | 福江島全域 |
| 種目 | Aタイプ(スイム3km, バイク160km, ラン42.2km)、Bタイプ(スイム1.6km, バイク104km, ラン21.1km)など |
| 特徴 | アップダウンの激しい絶景コースと、島民による熱心な応援 |
富江半島ブルーライン健康ウォーク大会
五島市提供
トライアスロンのような激しいスポーツは少しハードルが高い、と感じる方におすすめなのが、このウォーキング大会です。例年ゴールデンウィーク期間中に開催され、子どもから大人まで、誰もが自分のペースで参加できるのが魅力です。 会場となるのは富江半島の美しい海岸線沿いに整備された道で、心地よい潮風を浴びながら、どこまでも続く青い海と空の絶景を楽しめます。 コースは体力に合わせて選べるように複数用意されており、事前予約も不要で気軽に参加できます。 澄んだ空気のなか、家族や友人と語らいながら歩けば、心も体もリフレッシュできることでしょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開催時期 | 例年5月 |
| 場所 | 五島市富江町 さんさん富江キャンプ村周辺 |
| コース | 4kmコース、8kmコースなど |
| 特徴 | 参加無料で予約不要、美しい海岸線を気軽にウォーキングできる |
福江島の祭りと一緒に楽しみたい観光情報
福江島を訪れるなら、祭りやイベントだけでなく、その土地ならではの魅力も存分に味わいたいものです。豊かな自然が育んだ絶品グルメや、島の歴史を物語る荘厳な教会群など、旅の思い出をより一層深く、色鮮やかにしてくれるスポットへ足を運んでみてはいかがでしょうか。
イベント会場周辺のおすすめグルメスポット
福江島は、潮風が育んだミネラル豊富な牧草で育つ「五島牛」や、日本三大うどんに数えられる「五島うどん」、そして何といっても新鮮な海の幸の宝庫です。 祭りやイベントの合間に、あるいは一日の締めくくりに、島の恵みを心ゆくまで堪能できるグルメスポットをご紹介します。
福江島で味わうべき代表的なグルメ

島を訪れたなら一度は味わっていただきたい、代表的なグルメとその特徴をまとめました。多くのお店で提供されているので、ぜひお気に入りを見つけてみてください。
| グルメ名 | 特徴 |
|---|---|
| 五島牛 | 潮風を受けたミネラル豊富な牧草を食べて育ち、やわらかな肉質と豊かな風味が特徴です。 ステーキや焼肉でその味を確かめるのがおすすめです。 |
| 五島うどん | 遣唐使の時代に伝わったとされる歴史あるうどんです。 細麺でありながら強いコシを持ち、椿油を使って延ばす製法がつるりとした喉ごしを生み出します。 あご(トビウオ)出汁でいただく「地獄炊き」は必食です。 |
| 新鮮な海の幸 | 近海で獲れるキビナゴやハコフグ、サバといった魚介類は鮮度抜群です。 刺身や寿司はもちろん、ハコフグの腹に味噌を詰めて焼く郷土料理「かっとっぽ」も珍しい一品です。 |
エリア別おすすめグルメ情報
福江みなとまつりなどが開催される福江港周辺の市街地エリアは、飲食店が集中しており、様々なジャンルのグルメを楽しむことができます。 少し足を延せば、地元の食材を活かした個性豊かなお店にも出会えます。
| エリア | 特徴 | 代表的なお店のジャンル |
|---|---|---|
| 福江港・市街地エリア | 観光客にも地元の人にも愛される名店が揃っています。 ランチからディナーまで、幅広い選択肢があるのが魅力です。郷土料理を味わえる割烹や居酒屋、五島牛を専門に扱う焼肉店などが人気です。 | いけす割烹、寿司、焼肉、五島うどん専門店、居酒屋、洋食レストラン |
| 郊外エリア | 美しい景色を眺めながら食事ができるカフェや、製麺所に併設されたうどん店など、その場所ならではの体験ができます。 ドライブの途中に立ち寄るのも楽しいでしょう。 | 古民家カフェ、うどん製麺所直営店、海辺のレストラン |
世界遺産の教会群めぐり
福江島は、2018年に世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産を有する、祈りの島でもあります。 厳しい弾圧の時代を乗り越え、信仰を守り抜いた人々の歴史に思いを馳せながら、静かで荘厳な祈りの空間を訪れてみてはいかがでしょうか。
江上天主堂(世界遺産構成資産)

奈留島にある木造の教会で、クリーム色の外壁と水色の窓枠が周囲の緑に美しく映えます。 教会建築の名工・鉄川与助が設計を手掛け、信者たちが漁で得た資金で建立しました。 内部のコウモリ天井は、賛美歌の声を美しく響かせるための工夫です。 見学には「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンター」への事前連絡が必須ですのでご注意ください。
堂崎天主堂(長崎県指定有形文化財)

禁教令が解かれた後、五島におけるキリスト教復活の拠点となった教会です。 現在の赤レンガ造りの建物は1908年に完成したもので、内部はキリシタン資料館として公開されています。 弾圧の歴史を物語る貴重な資料が数多く展示されており、五島のキリシタン史を深く知ることができます。
教会めぐりの心得
島内に点在する教会は、今もなお地域の人々にとって大切な祈りの場です。訪れる際は、敬意を払い、マナーを守って見学することが求められます。
| 項目 | 心得・注意事項 |
|---|---|
| 見学マナー | 教会は信者の方々の大切な祈りの場です。ミサや冠婚葬祭などが行われている場合は入堂を控え、堂内では静粛にし、脱帽しましょう。 写真撮影が禁止されている場所も多いため、現地の案内に必ず従ってください。 |
| 事前連絡 | 世界遺産の構成資産である江上天主堂をはじめ、多くの教会で見学に事前連絡が必要です。 訪問前には必ず各教会の見学方法を確認し、必要な手続きを行いましょう。 |
| 服装 | 極端に肌を露出した服装は避け、祈りの場にふさわしい節度ある格好を心がけましょう。 |
まとめ

福江島のイベントや祭りを巡る旅、いかがでしたでしょうか。歴史を物語る勇壮な祭りから、豊かな自然が主役となる季節ごとの催しまで、福江島は一年を通して私たちを楽しませてくれる、まさにイベントの宝庫と言えるかもしれません。それぞれの行事には、この島で暮らす人々の想いや歴史が息づいており、それが訪れる私たちの心を強く惹きつけるのではないでしょうか。この記事を片手に、あなたの旅の目的にぴったりの時期を選んで、ぜひ福江島を訪れてみてください。きっと忘れられない思い出があなたを待っているはずです。








