安納芋が紅はるかより優れている点とは?安納芋が紅はるかよりオススメな点とは?安納芋と紅はるかを外見、色の違い、栄養成分の違い、安納芋の甘さの秘密まで徹底比較します。

安納芋とは?安納芋の歴史

安納芋。今や知名度が全国区となった大人気の種子島産さつまいもで、読み方は「あんのういも」です。コロッとした丸みのある可愛らしい形も、人気の一つです。第二次世界大戦後、スマトラ島北部のセルダンという地域から、兵隊が持ち帰ったお芋の苗を、種子島の安納地区で栽培されたのが、「安納芋」の始まりと言われています。そのねっとりした不思議な食感のお芋は、これまで琉球から伝わった唐芋(さつまいも)とは比べ物にならないほど甘く、これを島のみんなにも食べてもらおうと、島内で栽培が始まりました。生のままでも糖度が16度前後と高く、加熱後は糖度が40度近くにもなるほど高くなり、驚くほどの甘さで瞬く間に島の人々の舌と心をとらえ、大人気となり、種子島の宝物になりました。

1998年に品種登録される際「安納芋」と名付けられ、皮が褐紅色のものを「安納紅」、皮が黄褐色のものを「安納こがね」として2品種登録されました。平成25年までは種子島でのみ栽培が認められ、他の地域では栽培が認められていませんでした。そのため安納芋といえば種子島!というほど、種子島の特産品として広く知られていました。その後安納芋の人気にあやかって、平成25年以降は他の地域でも栽培が認められ、各地で栽培されるようになりました。これが現在では全国的に大人気の「安納芋」の歴史です。

紅はるかとは?

紅はるかは、(独)九州沖縄農業研究センターによって2010年に品種登録された比較的新しいさつまいもの品種です。芋の形や大きさにばらつきが出にくく、調理した時に実の色が鮮やかな黄色になるという優れた特徴を持つ「九州121号」と、特に沖縄で春ごろ黄金色のさつまいもが収穫され、外観の美しさや皮色、食味に定評のある「春こがね」を交配させて誕生したのが紅はるかです。この2種のさつまいもより、皮の紅色や味がはるかに優れているということから「紅はるか」と名付けられたそうです。

紅はるかの主な産地としては、大分県、宮崎県、茨城県などがあり、それぞれ大分県では「甘太くん」、宮崎県では「葵はるか」、茨城県では「紅天使」というブランドで栽培、販売されています。紅はるかは、熱を加えると安納芋にも匹敵するようなクリーミーな口当たりと甘さになるのが人気です。特徴として、高い糖度の糖質の中でも麦芽糖の比率が高いといわれており、食べると濃くて強い甘さでありながら、後味がさっぱりした上品な甘さを感じさせてくれます。

また断面にみられる白い乳液状のヤラピンという成分が含まれていることも特徴です。ヤラピンは熱に強く加熱しても壊れにくいとされ、お通じを良くし便秘解消に役立つとされています。もともとさつまいもに豊富な食物繊維と合わせて、とても良い効果が期待されます。食べ方としては、紅はるかの特徴であるほくほく食感をいかした焼き芋やふかし芋がお勧めです。

安納芋と紅はるかの比較

さつまいもの種類は多くありますが、甘みが強く、ねっとり系で人気の「安納芋」と「紅はるか」を比較してみましょう。

外観

安納芋はコロンとした丸い形が特徴的で、大きい、小さい、長いなど、比較的個性がありますが、他のさつまいもより丸みがあるため、見た目でわかりやすい。紅はるかは紡錘形で、端にいくほど細長い形をしており、形状や大きさにばらつきが少なく、そろいが美しいのが特徴です。

色の違い

安納芋は品種によって違い、安納紅は褐紅色、安納こがねは黄褐色をしており、果肉はどちらもオレンジ色をしているのが特徴です。紅はるかは、皮は赤紫の鮮やかな色をしており、果肉は白みがかった黄色です。

栄養成分の違い

さつまいもは、一般的にどのさつまいもも食物繊維、ビタミンC、ビタミンE、カリウム、亜鉛などのミネラル類が豊富です。中でも、安納芋の特徴は果肉のオレンジ色ですが、ビタミンAのもとになるカロテンが多く含まれ、動脈硬化を予防する効果が期待できると言われています。一方、紅はるかは、切り口から出る白い乳液状のヤラピンという成分が多く含まれるのが特徴で、胃の粘膜を保護したり、整腸作用があったりと、便秘予防に効果的と言われています。

安納芋の甘さの秘密

さつまいもの美味しい甘みは、芋に含まれるデンプン量によって変わります。デンプンが糖に変化する事で甘みが強く感じられるため、収穫してから1ヶ月程度熟成させた頃が食べ頃です。また、安納芋の主な産地である種子島は、1年を通して温暖なため、寒さに弱いさつまいもを他の地域よりも長期間、畑で栽培することができます。それによって、光合成で作られた栄養分が多くなり、デンプンの量も多くなるのです。さつまいもの甘みを最大限に引き出すことのできる種子島で育った安納芋。

さらに、甘さの秘密にはもう一つ、安納芋の形状が関係しています。

甘さには糖度も大事ですが、それと同時に食感も非常に大事です。安納芋の特徴であるねっとりとした食感を活かすには、低温でじっくり加熱することが大切です。紅はるかも同じことが言えますが、安納芋の形はコロンとして丸みを帯びているため、紅はるかよりもさらにじっくり加熱をしなければ、一番厚みのある部分に火が通りません。逆に言えば、紅はるかは細長いため火の通りが早く、安納芋より短時間で火が通ってしまいます。糖度にすると大きな差がない場合でも、より時間をかけて加熱した安納芋の方が、よりクリーミーでねっとりした食感と優しい甘みが感じられるのです。

安納芋といえば焼き芋、というイメージがあると思いますが、甘みが強いのでスイートポテトやコロッケ、さつまいもサラダにしても美味しいです。また焼き芋や蒸し芋にしたものを冷凍し、半解凍くらいで冷たく食べるのも暑い季節にはまた違った味わいを楽しめます。

最後に

スマトラ島北部のセルダンという地域からやってきた安納芋。その後、種子島の温暖な気候とミネラル豊富な土壌で育ち、今や全国的に大人気になった安納芋。さつまいもが好きな方はもちろん、そうでない方でも一度は耳にしたことがある名前だと思います。紅はるかの人気もじわじわと迫ってきていますが、おやつやお料理に色々チャレンジして、ぜひ安納芋でしか味わえない甘さ、見た目にも綺麗なオレンジ色を楽しんでみて下さい。