10年ぶりの宮崎!懐かしさと新鮮さが交差する4泊5日
山口、新潟に続き、私のライフワークとなりつつある「お芋旅」の第三弾。 今回選んだ目的地は、私が大学時代の4年間を過ごした思い出の地、宮崎県です。
友人の結婚式で訪れて以来、なんと10年ぶりの宮崎。宮崎駅周辺やメインストリートはすっかり様変わりしており、懐かしさよりも「こんなにお洒落になってる!」という新鮮な驚きからのスタートとなりました。
1泊目は別件の用事があり、なんとあの「シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート」に宿泊させていただきました。用事を無事に済ませた後は、大学時代の恩師や友人、そしてアルバイト先で大変お世話になった方々との再会を果たし、思い出話に花を咲かせました。
それ以降の時間は、完全に一人で気ままに観光を楽しむことに。 実は大学生の時に4年も住んでいながら、当時はサークルとアルバイトに明け暮れており、宮崎が誇る素晴らしい観光地にほとんど足を運んでいなかったのです。今回はその悔やんでいた過去を取り戻すべく、そしてもちろん大好きな「お芋」を巡るべく、宮崎を縦横無尽に旅してきました。
神話の郷「高千穂峡」へ!奇跡的に乗れた体験型アトラクション

観光のスタートに選んだのは、宮崎屈指のパワースポットとして有名な神話の郷「高千穂峡」です。
宮崎市内からは、電車とバスを乗り継いでなんと3時間半。移動だけでちょっとした小旅行ですが、そんな大変な思いをしてでも行く価値が間違いなくありました。現地に到着してまず向かったのが、廃線となった旧高千穂鉄道の線路を利用した体験型アトラクション「グランスーパーカート」です。
当日予約だったにもかかわらず、タイミング良く乗ることができたのは本当にラッキーでした。というのも、非常に人気のアトラクションであることに加え、この日は朝から雨がパラついており、いつ運行休止になってもおかしくない状況だったからです。
カートに乗り込み、風を切りながら進む景色はまさに絶景。 途中でタクシーを利用した際、運転手さんが熊本地震の影響について語ってくれました。高千穂峡は熊本県に隣接しているため、地震の際にはかなり激しく揺れたそうです。さらに、熊本経由で宮崎へ観光に来るルートが道路の寸断によって迂回を余儀なくされ、観光シーズンに大きな打撃を受けたという、現地のリアルな声を聞くことができました。
それでも、やはり高千穂は日本を代表する人気の観光地。雨模様の中でも多くの観光客で賑わっており、特に外国人の姿が目立っていたのが印象的でした。
まさに「お芋のテーマパーク」!霧島酒造ファクトリーへ

旅の3日目は、朝早く宮崎駅を出発し、電車に揺られて「霧島神宮」へと向かいました。

温泉も湧き出る自然豊かな霧島エリア。昔から「ここは宮崎のものだ」「いや鹿児島の場所だ」と地元の人たちが冗談交じりに喧嘩していたそうですが(笑)、霧島神宮の所在地は鹿児島県に位置しています。 そのため、敷地内のお土産屋さんには鹿児島名物がズラリ。

お芋好きの私の目は、ずらりと並んだ「安納芋のお菓子」に釘付けです。どれにしようか散々迷った挙句、大きなスイートポテトと安納芋のバウムクーヘンをちゃっかり購入しました。
雨が本降りになってきたため、タクシーで霧島駅に戻り、電車で都城駅へと移動しました。都城駅から車で10分ほどの場所にあるのが、今回のメイン目的のひとつ「霧島ファクトリーガーデン」です。

ここは、「赤霧島」の大ヒットで全国にその名を轟かせた芋焼酎メーカー・霧島酒造の工場兼テーマパーク。 1996年に建てられ、その後リニューアルされた広大な敷地内には、工場見学コースはもちろん、焼酎の麹やさつまいもを使った料理が楽しめるレストラン、さらにはパン屋さんまで併設されています。家族連れで楽しめる人気の観光スポットとしてガイドブックにも大きく取り上げられていますが、私にとっては焼酎の原料として欠かせない「お芋が主役のテーマパーク」に他なりません。

実はつい2週間前、地元の五島列島酒造を見学し、芋焼酎づくりの奥深さと、想像を絶する大変な作業に深く感銘を受けたばかりでした。タクシーを降りると、左手には巨大なタンクが並ぶ工場、右手には一般客が楽しめる洗練された施設が広がり、そのスケールの大きさに圧倒されました。
黄金千貫のスムージーと、無人資料館での学び
残念ながら、工場の製造ライン見学は全時間帯で予約が埋まっており参加できませんでした。完全に甘く見ていました…。
気を取り直して、正面玄関を入ってすぐのショップへ。 焼酎やオリジナルグッズを横目に、私は迷わず「さつまいもの銘菓コーナー」へまっしぐら。鹿児島に近い立地のおかげか、宮崎駅では見かけない珍しいお芋のお菓子が所狭しと並び、なんとお芋のジェラートまで販売されていました。

電車の時間が迫っていたため、奥の広いレストランでの食事は諦め、隣接するパン屋さんで小休憩をとることに。 ここでは焼酎の酵母を使ったパンがずらりと並び、イートインスペースで焼きたてを味わえます。私は迷わず「お芋(黄金千貫)のスムージー」とパンを注文。白芋である黄金千貫を使ったスムージーは、強烈な甘さではなく、サツマイモ特有の野趣あふれる香りが鼻に抜け、クセになる大人の味わいでした。

お腹を満たした後は、ショップの裏手をのんびり散策。バーベキューができる大きな広場や芝生を抜けた奥に、ひっそりと佇む「霧島酒造の資料館」を発見しました。受付もなく自由に見学できるスタイルで、見学者は私ただ一人。誰にも気兼ねなく、じっくりと展示を堪能することができました。
ここは写真撮影禁止だったため、ノートにびっしりとメモをとってきました。展示は非常にわかりやすく、九州におけるお芋のルーツから、焼酎開発の苦難の歴史までが丁寧に解説されており、お芋と焼酎の切っても切れない深い結びつきを改めて実感しました。ここを見学せずに帰るのは絶対にもったいないです!
南九州でさつまいもと焼酎が育まれた理由
資料館の展示で特に興味深かったのが、南九州の歴史と風土です。
人類が誕生するはるか昔から大規模な火山の噴火が繰り返され、そこに降り積もった火山灰による「シラス台地」。水はけが良すぎるこの痩せた土地こそが、さつまいもの栽培に最も適していたのです。 さつまいもは1605年に中国大陸から琉球に伝わり、1705年に鹿児島へ。長崎には1615年、そして私の故郷・五島には1866年に伝えられたとマップに記されていました。(五島のことまでしっかりと書いてくれていて、とても嬉しかったです!)
また、鹿児島と宮崎で焼酎づくりが盛んな理由は「水」にもあります。 霧島の山々に囲まれた盆地に降った雨水が、長い時間をかけてシラス台地の石や砂で濾過され、地下深くの岩の割れ目に溜まった「裂罅水(れっかすい)」。このピュアで豊かな水が、極上の焼酎造りに不可欠だったのです。
県外へ出荷される焼酎はアルコール度数25度が一般的ですが、宮崎県内では「20度」の焼酎がこよなく愛されています。戦後の酒税対策として経済的だったことや、ロックで飲んでもツンとせずマイルドで飲みやすいからだそうです。
代表格である「白霧島」と「黒霧島」は、皮も中身も白い「黄金千貫」を使用しており、味の違いは使われている「麹(こうじ)」の色からきています。 一方、スタイリッシュなラベルが大好きな「赤霧島」は、紫芋の品種を幾度も掛け合わせるという果てしない試行錯誤の末、黄金千貫のDNAを引き継ぐ「紫優(ムラサキマサリ)」という品種に辿り着いたことで誕生しました。アントシアニンが豊富で、赤ワインのような上品で華やかな風味が特徴です。
霧島酒造を起ち上げた先人たちの凄まじい苦労が実を結び、地元に深く愛され、今のこの近代的な施設へとつながっている。宮崎を観光する際は、ぜひ霧島神宮とセットで立ち寄って、この深い歴史に触れてみてください。(ちなみに近くにバス停がないため、都城駅からはタクシーの利用が必須です)
運命的なご縁!「アオイファーム」直営店で極上スイーツ体験
宮崎のさつまいも農業を語る上で絶対に外せないのが、串間市に本社を構え、大々的に事業を展開している「株式会社くしまアオイファーム」です。
宮崎市内で再会してお茶をしたJA女性部の友人が、なんとアオイファームの社長の娘さんとお知り合いとのこと! 私が「串間市まで行こうか迷っている」と相談すると、「串間はかなり遠くて電車も少ないから、清武駅の近くにある宮崎市内の直営店に行った方が絶対いいよ!」と教えてくれました。
しかも、その直営店を運営しているのが、社長の娘さんである「あおい」さんだと言うのです。私の娘の名前も「葵」。さらにアオイファームの会社所在地が「串間市奈留」であり、私の出身が「五島の奈留島」…!これほどまでの偶然の重なりに強烈なご縁を感じずにはいられず、最終日の午前中、飛行機に乗る前に絶対にお店へ行こうと心に決めました。
絶品!紅芋モンブランラテと「おいもなか」

お店の場所は、宮崎駅から南へ電車で2駅の「清武駅」。ショッピング施設が並ぶベアーズモール清武の駐車場入り口にあります。2025年1月にオープンしたばかりの新しいテイクアウト専門のお店で、串間まで足を伸ばさなくても気軽にアオイファームの味が楽しめる場として、すでに地元で大人気になっているそうです。
店内は事務所も兼ねており、若いスタッフさんが笑顔で出迎えてくれました。オーナーのあおいさんはあいにくご不在でしたが、「このお店に来るためだけに、長崎の五島から来ました!」と伝えると、とても喜んでくださり、親切にいろいろなお話を聞かせてくれました。

冷凍ショーケースには、友人激推しの大学芋や焼き芋、そして熊本名物のいきなり団子などが綺麗に並んでいます。焼き芋器の中では、極上の「紅はるか」がちょうど焼き上がったところで、店内はたまらなく甘い香りに包まれていました。

お店の方のおすすめで、夏季限定の「紅芋モンブランラテ」と、オリジナルスイーツの「おいもなか」を特別に店内で食べさせていただくことに。 インスタ映え間違いなしの紅芋モンブランラテは、冷たいさつまいもスムージーの上に、鮮やかな紫芋ペーストのモンブランがたっぷりと絞られており、一杯で二種類のサツマイモの風味を味わえる超贅沢なドリンク。

そして「おいもなか」は、香ばしいパリパリの最中の皮の中に、濃厚な焼き芋と程よい酸味のクリームチーズがたっぷりと挟まっています。上からパラリとかけられたスパイスが絶妙なアクセントになり、和と洋が見事にマッチした新感覚のスイーツでした。このクオリティでお値段がお手頃なのも本当に驚きです。
ピンチをチャンスに変える農業ベンチャーの挑戦

アオイファームは、近年南九州のさつまいも農家を苦しめている「基腐(もとぐされ)病」の大流行という絶体絶命のピンチに直面しました。しかし彼らは立ち止まることなく、2023年に「株式会社おきなわアオイファーム」を立ち上げ、病害のない沖縄の圃場での生産をスタートさせました。テレビ番組『がっちりマンデー!!』でもその革新的な取り組みが紹介され、数々の賞を受賞しています。店内には、新品種である「栗かぐや」の青果も並んでおり、常に新しいさつまいもの可能性に挑戦し続ける姿勢に胸が熱くなりました。
ご親切にしていただいたお礼として、名刺代わりに私が手掛けているアグリ・コーポレーションの「ひとくち焼き安納芋」をお渡ししました。私たちの「Hotel Imo」の話をすると、「ぜひ五島へ行ってみたいです!」と目を輝かせて言ってくださり、いつかまたご縁が繋がる予感がしました。
さつまいもに始まり、さつまいもで締めくくる旅
宮崎といえば「南国・灼熱」のイメージがありましたが、台風が近づいていた影響で滞在中は曇りや雨の日が多く、五島の厳しい夏よりも涼しくてとても過ごしやすかったです。

振り返ってみれば、今回の旅では宮崎牛、チキン南蛮、宮崎地鶏、そして芋天が乗った柔らかい宮崎うどん、甘く熟れたマンゴーパフェに芋焼酎と、宮崎の最強グルメをこれでもかというほど堪能しました。ホテルで伝統的な「日向のひょっとこ踊り」を鑑賞できたのも良い思い出です。
帰りの搭乗時間まで少し余裕があったので、宮崎空港のお土産店をぶらぶらと見て回っていると、冷凍コーナーで「おいも餃子」と書かれた商品に目が留まりました。なんでも、JA宮崎の直営農場では、宮崎牛や豚の飼料にさつまいものパウダーを混ぜて食べさせることで、上質で甘みのある脂のお肉を実現しているのだそうです。これには驚きました。 五島牛の飼育でもぜひ試験的に試してみたいアイデアです。日本の食料自給率には家畜の飼料も含まれるため、宮崎県はまさに「さつまいも」を活用して日本の食料事情に大きく貢献しているのだと深く感心しました。
今回は、延岡市、都城市、清武町とかなり遠出をしましたが、宮崎県は南北に非常に長く、まだまだ行きたい場所が山ほどあります。かなりハードなスケジュールで動き回りましたが、それでも時間が全く足りませんでした。次回訪れるときは、誰かにレンタカーの運転をお願いして(笑)、ワイナリー巡りや伝統的な神楽の鑑賞、そしてゆっくりと温泉巡りも楽しみたいと思います。
口蹄疫や新型コロナウイルスの影響で、一時は宮崎の観光業もどうなることかと心配していましたが、新しいホテルも増え、観光客の姿も戻り、かつての活気を完全に取り戻しつつあるのを肌で感じました。
大学進学で初めて宮崎へ来た頃は、島を離れる不安でいっぱいでした。しかし、大学の仲間やバイト先の方々の温かい人柄、愛嬌たっぷりの宮崎弁、安くて美味しい食べ物、そして大らかな自然に触れるうち、どこか故郷の五島に似た安心感を覚え、宮崎は私にとって第二の故郷のように住みやすい街になりました。
昔は、オリエンタルエアブリッジが五島福江と宮崎を結ぶ直行便を飛ばしていました。直行便が廃止される最後の年に、大学の下見のために乗ったのが、私にとって最初で最後の直行便体験となりました。 現在、新幹線の通っていない宮崎へ五島から向かうには、福岡経由で飛行機やバスを乗り継ぐか、長崎〜熊本経由で高速バスを乗り継ぐしかなく、丸一日がかりの大移動になってしまいます。せめて1年に1回、期間限定でもいいので、五島と宮崎を結ぶ直行便が復活してくれないかなと、帰りの機内で窓の外を眺めながら密かに願うのでした。








